第十三章
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第十三章
「私、西園寺君に謝ることがあるの」
「僕に？」
「香水つけたり足見せたり。色々して」
「え、ええと」
範人にとっても思い当たるふしのあることだった。何しろ有美のそうした行動から余計に彼女を意識したのは事実だからだ。
「それは。つまり」
「そうなの。私西園寺君の気を引こうと思って」
「そうだったんだ」
「御免なさい」
顔を俯けさせたまま謝罪の言葉を述べる。
「惑わせるようなことして。西園寺君を」
「それはいいよ」
有美のそうした行動を微笑んで許す範人だった。
「それはね。いいよ」
「いいの」
「うん。だってさ」
範人はまた有美に言ってきた。
「遠野さんも僕のことが」
「ええ、そうだったの」
こくりと頷いてから述べた言葉だった。
「実は。ずっと黙っていたけれど」
「そうだよね。それは」
「だから。御免なさい」
あらためて彼に謝罪してきた。
「からかうようなことして。そんなことをして」
「だからいいよ。それにね」
「それに？」
「僕、それを聞いて嬉しいし」
こう言うのであった。
「とてもね。嬉しいよ」
「どうしてなの？」
これは有美にはわからないことだった。顔をあげて彼に問うた。
「嬉しいって。そんなことしたのに」
「だって。僕のことが好きだからしたんだよね」
「え、ええ」
驚いたような顔になって彼の今の言葉に答えた。
「それは。そうだけれど」
「だったらいいよ」
また笑顔になって述べる範人だった。
「それだったら」
「そうなの」
「それで。また聞くけれど」
範人はさらに有美に対して問うてきた。
「僕じゃ駄目かな」
「駄目かなって」
そう問われると有美にしろ答えは決まっているので困ってしまうのだった。
「そんなわけ」
「ないの？」
「そうよ」
顔を真っ赤にさせて彼の問いに答えたのだった。
「だって。その為だから」
「そう。それじゃあ」
「それよりもよ」
有美の方から言うのだった。
「私で。いいのよね」
「勿論だよ。だって僕も」
「西園寺君も？」
「遠野さんのことが好きだったから。ずっとね」
「西園寺君・・・・・・」
有美は泣きそうな顔になって範人の言葉を聞いてそのうえで彼の言葉に頷いていた。彼女の仕掛けたことは蛇足だったかも知れないが無駄ではなかった。何故なら今こうして彼の告白を聞いて受けることができたのだから。無駄ではないのは間違いなかった。
舞台は急転 完
２００８・１２・１９
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