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舞台は急転
第十二章
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第十二章

「それでも何よ。その態度」
「いいからいいから」
「ねえ」
「何が何かわからないけれど行くことは行くわ」
 これはもう自分で決めているので迷いはなかった。
「それじゃあね。これからね」
「行きなさい」
「わかってるわよ」
 こうしてお昼を食べ終えて屋上に向かう有美だった。こうして教室を出た彼女を見送りながら周りの面々は。苦笑いを浮かべるのであった。
「意外と鈍いみたいね」
「困ったことにね」
 勿論有美はその笑みのことを知らない。何はともあれ彼女は屋上に行った。だがそこの階段の前であの彼女がいたのであった。
「あれ!?」
「どうも」
 紗枝であった。にこにこと笑って屋上に行くその扉の前で立っているのだった。そこで彼女は楽しそうなその笑顔で有美を見ていた。
「貴女だったの?」
「屋上です」
 有美の問いにこう答えるのだった。
「屋上にいますから」
「いますからって」
「だから。いますから」
 また言う紗枝だった。
「それじゃあ」
「それじゃあって」
「頑張って下さいね」
 紗枝は笑顔のままで有美の前から姿を消し階段を降りていく。擦れ違いざまにまた笑ってこう言ってきたのだった。有美はそんな彼女の笑顔を見てさらにわからなくなった。
「何が何なのよ」
 屋上のその扉の前で腕を組んでいぶかしむ。どういうわけか彼女はここでとにかく今はかなり鈍くなってしまっていた。電車のことや図書館のことが頭にあってそれが離れないせいであった。
「まあとにかく」
 とりあえずそのことは頭の片隅にやってそのうえで屋上の扉を開いた。すると。
「えっ!?」
 屋上にいたのは。何と。
「西園寺君!?」
「待っていたよ」 
 いたのは範人だった。微笑んで有美に言ってきた。
「ちょっとね」
「どうしてここに」
「ええとね。何て言えばいいかな」
 範人は顔を赤らめさせて俯き気味に有美に対して言うのだった。
「あのね、遠野さん」
「ええ」
「よかったらね。僕と」
「西園寺君と!?」
「付き合ってもらえるかな」
 こう彼女に告げてきた。
「僕と。駄目かな」
「西園寺君のって」
「何か最近やけに気になって」
 また言うのであった。
「前から意識はしていたけれど」
「そうなの」
「だから。よかったら」
「私とって」
「そうなんだ。遠野さんさえよかったら」
 戸惑いながらも言葉を続ける範人だった。
「それでね」
「私の方こそ」
 今度は有美がその顔を赤らめさせてきた。
「いいのかしら」
「いいも何も」
 範人はその顔を赤くさせている有美に言葉を続ける。
「遠野さんだから」
「有り難う。けれど」
「けれど?」
「その言葉、凄く嬉しいわ」
 その真っ赤な顔での言葉である
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