第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十六日・夜:『スクール』
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冷笑を変えずに、舞い降りた『天使』がいた。間違いようもない、それこそは『未元物質』垣根帝督。目にも留まらぬ速さで、ゴーグルの少年と嚆矢との間に舞い降りたその白い羽が────羽撃いた。
「俺の『未元物質』に、常識は通用しねぇ────」
刹那、世界が煉獄と化す。彼にはそれしか見えず。背後の研究棟が崩壊した事は、翌日のニュースに上る事態となった。
「へぇ……あれを受けて、まだ形があるとはなぁ。部下なら重宝したんだが」
後に残ったのは、第二防呪印『キシュの印』に護られた最愛と第三防呪印『ヴーアの印』に護られたフレンダ。そして、最終防呪印『竜尾の印』にて最愛とフレンダの盾となった嚆矢だけ。
その三つの魔法陣も、同時に砕け散った。最早、彼等を護る盾はない。
──無理、だな。今の状態じゃ、逆立ちしなきゃ勝てる訳がない。
《では……儂の具足を欲するか?》
(…………)
窮地を嘲笑いながら、“悪心影”が背に凭れる。甘え掛かる遊女のように、命を握る暗殺者のように。
思い出したのは、燃え盛る天守閣。彼処で見た見事な甲冑、鎧兜を。
《欲するのであれば、与えようぞ。しかし、代償は戴こう……》
(……ハ、得るモンより喪うモンの方がデケェンだろうが。結構だよ、クソッタレ)
呵呵、と耳障りな哄笑を残して“悪心影”が離れていく。悪辣なる神の囁き、それが消えた安堵に包まれながら。
目の前の白い翼の男。その威容を回顧し、光輝く白い翼の昂りに再び緊張と絶望を取り戻して。
「んじゃ、もう一発。今度こそ……さようならだ」
「ああ……全くだ」
だが、知るが良い天使。砕けた四つの印は、虚空に消えた。四つの御印は、『この世ならざる虚空』に御座す『神』に届いたのだ。
泡立つように、ショゴスが虚空に球を為す。やがてそれは、導かれるように形を成して。
「飢える、飢える、飢える! 生け贄二体、十分だろ……“ヨグ=ソトース”!」
呼び掛けに、時空が軋む。祭具にして杖たる偃月刀、その内側より覗く無数の瞳が────嚆矢と最愛、フレンダの三人を捉えて。
「“ヨグ=ソトースの次元跳躍”」
………………
…………
……
『未元物質』が舐め尽くし、焼き尽くした空間には何も残っていない。完全に消滅したのだ、塵も残さずに。
それだけの破壊力が、殲滅力が帝督の能力にはある。だからこそ、学園都市の第二位の超能力者と自他共に認める存在だ。
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