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尼僧
第七章
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第七章

「それで御願いします」
「わかりました。それでは加藤さん」
「はい」
「今からどちらに行かれますか?」
 穏やかな声で彼に尋ねてきた。
「これからどちらへ」
「本堂へ」
 そこに行くというのであった。
「そちらに行きたいのですが」
「本堂にですね」
「そうです」
 やはりそこだと答えるのだった。
「そこにです」
「わかりました。それではです」
「それでは?」
「御案内させて頂きます」
 こう彼に言ってきたのであった。
「今から。それで宜しいですね」
「はい、それでは」
「こちらです」
 今度は身体を少し横にして左手で前を指し示してきた。
「こちらへどうぞ」
「はい、それでは」
「本堂は今丁度朝の読経が終わったところです」
 そうした時間だというのである。
「ですから。どうぞ」
「有り難うございます。それでは」
 こうして彼は栄真に案内されそのうえで本堂を回った。これが朝のことであった。
 それが終わって宿に帰るといい時間だった。しかしまだ友人は寝ていた。
 その彼に声をかけるとであった。
「んっ、何だ?」
 寝惚けた顔で問うてきたのであった。
「もう朝か?」
「そうだよ、もういい時間だよ」
 笑って彼に言うのであった。
「もうね。起きるには遅い位だ」
「そうか、随分寝たんだな」
「随分どころじゃない位にね」
 笑って彼に話した。
「もうね。それだけ寝てるよ」
「そうなのか」
「そうだよ。それで今からどうするんだい?」
「まずはすっきりしたいな」
 友人はこう言ってきた。
「それからだな」
「風呂にでも入るのか」
「ああ、ここの風呂はいい」
 彼は風呂好きでもあった。この宿屋の風呂も随分と気に入っていたのである。それで笑ってこう言ってきたのである。
「それから軽く何か食べてだね」
「そして?後は?」
「また長谷寺に登ろう」
 こう慶祐に提案してきたのだった。
「それでどうかな」
「ああ、僕はそれでいいよ」
 彼は笑って友人の言葉に頷いた。
「また登るか」
「折角長谷寺に来たんだからな。何度でも行かないとな」
「そうだね。それじゃあね」
「うん、そうしよう」
 二人で風呂に入った。慶祐も付き合ったのである。それから軽いお握りの朝食を旅館で貰ってそこから出た。それからまた山に登るのだった。
 二人で本堂に入った。そこの懸造のところに登る。するとそこから緑の山々が一望できた。それと共に長谷寺の下までじっくりと見えた。
 高いそこはまるで空中にいる様である。木の柱に支えられた渡り廊下のところに二人並んで立ち下の階の屋根瓦やそういったものまでまじまじと見るのであった。
 後ろにある五色のだんだらも見る。慶祐はそのうえで言った。

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