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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり3
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幸運だったとしか言いようのない有様だ。持ってあと数分。それを過ぎれば、自分は世界を滅ぼす怪物に成り下がる。今日で世界が終わる。その予定を変えるには、後数分以内に決着をつけなければならない。
(つくづく厄介だな)
 切り札の一つが全く通じなかったなんて些細な事はどうでもいい。どうせ使いこなせなかったのだ。通じなかろうが大した問題ではない。深刻化する魔力の枯渇でさえ、まだやりようはある。だが、自分に残された時間の少なさは深刻な問題だ。今ここで堕ちてしまえば、あらゆる意味で血みどろの結末しか用意できなくなる。そんな結末は、誰にとっても救いにはならない。それは、おそらく彼女達とて分かっているはずだが。
(頼むから、少し大人しくしててくれ)
 首飾りから手を離し、右手を握りしめる。
(殺戮衝動から解放されるには、それを殺すよりない、か……)
 それが定めだ。そして、恩師達が見つけ出した答えでもある。だが、それがどうした。
 俺とて今さら救済者を気取る気はない。サンクチュアリ――エレインの理想に殉じるには自分は少しばかり血を浴び過ぎた……が、そんな事は回避できる悲劇を黙って受け入れる理由にはならない。彼を……彼らを生贄とし、奴らを退けたあの時から、
「いいだろう。それが定めだって言うなら――」
 自分は生粋の掟破りとなったのだから。



 
 世界を引き裂かんばかりに荒れ狂う雷撃。距離も位置も無視して突如として出現する雷の蛇。その巨体が誇る圧倒的な質量を考えれば、単なる突進といえど脅威以外の何ものでもない。プレシア・テスタロッサが転じたその怪物は、すでに人の手に負えるような存在ではなかった。もはやそれは人知を超えた天災のようなものだ。だが、
「何て奴だ……」
 御神光はその怪物を前に一歩も譲らない。彼の身体から立ち上る深淵の魔力はさらに密度を増し、その魔法は鋭く怪物の身体を貫いていく。
『おーおー、いきなり飛ばしてやがるなぁ相棒。代償刻印まで全開にしてやがる』
 クククッ、とリブロムが呑気に喉を鳴らす。相変わらず何を考えているか良く分からな
い本だった。
「代償刻印?」
『それまで蓄積させた右腕の代償――そこに宿る魔力全てを代償にして心臓に刻みつける特殊な刻印の事だよ。相棒のそれはかなり凶暴だぜ? 何せ年季が違うからよ。ヒャハハハハハハッ!』
 心臓に刻印を刻む。その言葉にゾッとしながら――それでも、覚悟を決めた。もう何を聞いても驚くまい。彼の魔法は、僕らの物とは根本から異なっている。基本となる発想も。それが磨き抜かれた目的も。技術の発展に伴う経緯も。行使する上での前提も。
『もっとも、今の相棒は全盛期の半分も力を取り戻してねえ。しかも、暴れまくってたせいで随分と消耗してるらしい。さすがにちょっとばかり分が悪いかもなぁ。
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