魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり3
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だが、その間にも大蛇は位置も距離も関係なく縦横無尽に襲いかかってくる。
「隼よ!」
魔法により連続的に繰り返される超加速。それで魔女の抱擁をどうにかすり抜ける。だが、完全には避けきれなかった。さらに数ヶ所が食いちぎられる。距離も位置も無視する相手だ。速さではそもそも勝負にならない。迎撃するなら、向こうの動きに合わせなければ――静かに心眼を開く。空間を歪ませる魔力の燐光。それを見定めて――
「くたばれ……ッ!」
魔力を込めた血の刃でそれを強引に斬り退ける。確かな手ごたえはあったが……所詮は魔法によって生み出された物だ。プレシア自身が無事であればいくらでも再生してくる。だが、
「穿て!」
一瞬でも隙が出来た事には変わりない。その隙に氷棘を纏めて六本叩きこむ。その程度で仕留められる相手ではないが――
「氷の魔弾よ!」
炸裂する冷気の塊を叩き付ける。その衝撃に、その怪物がほんの僅かに攻撃の手を緩めた。とはいえ、あの程度では傷を負わせたうちにも入らない。もっと強烈な一撃を叩きこむ必要がある。それが出来そうな魔法と言えば――
(今の状態でどこまで制御できるか……)
かつての自分の力――リブロムから流れ込んでくる魔法の叡智を処理し切るだけの力がこの器にはまだない。それどころか、供物魔法を本来の威力で放つ事すらままならない。精々過去の経験から相手の動きを予測するのが限界だ。
三叉の氷撃波でけん制しながら、可能な限り距離を取る。『奴ら』が転じたドラゴン由来の供物。それに秘められた力の一端を解放する。アヴァロンの最高指導者にして叡智の結晶である歴代のペンドラゴンのみがどうにか扱えた――かつての自分も、その力を完全に引き出し、かつ制御するには随分と時間がかかった代物である。今の自分が完全に制御する事などおおよそ不可能だろう。だが、
「天竜よ!」
限界ぎりぎりまでの力を解放する。世界を滅ぼしたあの怪物が――それが転じた魔物が振るった力が、純白の光撃波となって大蛇の本体に迫る。だが、
「―――ッ!」
紫電の大蛇の群れがが、天竜の尾を喰い千切るべく殺到する。一匹二匹程度ならともかく、あの数ではさすがに分が悪い。
「クソったれ……ッ!」
何とか蛇の猛攻を突き抜けたが、期待したほどの傷ではない。むしろいくら不完全だったとはいえ、切り札の一つが完全に相殺されたと言っていい。さらに消耗した魔力を考えれば、俺の方が痛手を被ったようなものだ。
(これは、さすがにマズいか?)
右腕で剣の首飾りに――彼女から受け継いだ供物に触れながら呻く。これは良くない癖だった。追いつめられている時によくやってしまう。ああ、全く。実に厄介だ。
(正気を、いつまで保てるか……)
どす黒い衝動が意識を蝕む。正直に言えば、すでに限界だった。正気に戻れた事自体が
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