魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり3
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おかげで、私は何もする必要がない。その魔石が機能するために必要な魔力をただ供給するだけで良かった。ただし、その消耗は今の身体にはかなり堪えるものだったが。
(何て、卓越した技術なの……)
ジュエルシードの自動制御。それを彼がどの時点で準備していたかは分からないが――プレシア・テスタロッサですらこの域には達していない。自らの手で制御するのが限界だったはずだ。それなのに、光はその先に行っている。息子より年下の少年がこれほどの魔法技術を持っている事自体が異常だった。
「彼女が血を吐いた時はさすがに焦ったが……これなら、まだ取り戻せる範囲だ。何の問題もない」
だが、そんな事は全く取るに足らないと言わんばかりに光はその怪物だけを見ている。
その瞳が――その右目がリブロムと同じ輝きへと変化していく。異形の瞳。黄金に輝くそれが、プレシア・テスタロッサを見据える。
『違いねえ。なら、そろそろ始めようか。どこぞのクソ野郎どもが好きそうなクソったれな悲劇を終わらせるためによ! ヒャハハハハハッ!』
3
プレシア・テスタロッサが魔物化しつつあるというのは、予測していた事だ。ついでに言えば、状況が少しでも動けば魔物化してしまうであろうという事もだ。できれば、それも回避したかったが――あれほどに肺を病んでいるというのであれば、話は別だ。
また、ジュエルシードの使い方についても、おおよそ予想通りだったと言える。願いを叶える魔石という名目のジュエルシードだが、その本質はあくまで魔力が結晶化したものだ。ただし、その結晶化した魔力は強く世界に干渉する力を持っている。上手くその性質を利用してやれば、なるほど確かに何でも願いを叶えられるように見えるだろう。使い方によっては、世界そのものを復元する事も出来るかもしれない。生と死の境界を歪める事が出来れば――その前提として、魂と言う概念を理解する事が出来れば、あるいは死者蘇生にも挑めるのかもしれないが……これほど膨大な力をそれほどの繊細さで制御できるかと言われれば、全盛期の自分にとっても極めて困難であると言わざるを得まい。あくまでもアリシアと言う少女の蘇生だけが目的だというのであれば、それこそ一度素直に世界を滅ぼしてから、世界もろともに再生させた方がまだ確実であり、圧倒的に容易である。
何代もの『経験者』の記憶を有する身として言わせてもらうなら、おそらくアルハザードとやらに行くよりも。もっとも、それではまた繰り返されるだけだろうが。
ともあれ、全体を通してみればおおよそ予定通りだと言える。土壇場もいいところだが、どうにか巻き返せたようだ。しかし、
(やれやれ。少しばかりやりすぎたか……)
衝動に突き動かされるままに追体験を延々と繰り返したことで多少なりと力を取り戻しはしたが――それでも今の自分にとっ
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