魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり3
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るのだ。
「やめなさい!」
叫ぶ――が、そんな言葉にはもはや意味がない。彼女は一線を越えてしまった。
「私にもっと力を!」
轟――と、プレシア・テスタロッサの身体が得体の知れない魔力に包まれる。
「な、んだ? 何が起こってる!?」
プレシア・テスタロッサの狂ったような笑い声が辺りに響く。いや、それは悲鳴だったのかもしれない。
『分かんない! けど、気をつけて。魔力反応が増大してる! 多分これは――』
クロノの叫びに、エイミィも悲鳴のような声で応じる。
「暴走体か?!」
絶望的な響きと共に、クロノが呻いた。プレシア・テスタロッサという魔導師が八つのジュエルシードを取りこんで暴走体へと変化していく。いや、それは本当に暴走体なのか。今まで交戦したどの暴走体とも比較にならないほど、凶悪な魔力を感じる。
膨大な魔力流の向こう側に、もはや美しい女性のシルエットは望めなかった。歪み、捻じれ、膨れ上がった異形の怪物がその向こう側から姿を現す。
『蛇は死と再生の象徴、か。さすがにインテリだねぇ。まぁ、捻りがなくて面白くねえけどな。ヒャハハハハハハッ!』
リブロムが嗤う。実際、それは蛇の群れを編みあげ固めて作ったような怪物だった。髪も両腕も下半身も――その身に纏う雷でさえ全てが蛇でできていた。そして、同じく蛇の鱗に覆われた巨大な顔はプレシアのものではなく、フェイトの――いや、アリシアのそれだった。目を閉じた――失われた少女の顔。
我が子のためにあらゆるものを捧げた母親が転じた怪物は、それ故に醜悪さよりも哀しさを感じさせる。
「あの鬼婆……。本当に化物になっちまった」
放心したアルフがその場に膝をつく。
「母さん! 母さん! 元に戻ってよ! お願いだから!」
フェイトが動かない身体に鞭打って――這いずってでも近づこうとする。それを必死になのはが抱きとめていた。
「―――!」
その怪物が、声にならない悲鳴を上げた。それはもはや衝撃波となって肌を叩く。
『さて、相棒。どうするよ? 久しぶりの大物だぜ』
「別にどうもしないさ。どうせやる事は昔と何も変わらない」
そんな中で、御神光とその相棒だけが真っ直ぐにその怪物を見据えていた。その右腕からは深淵の魔力が立ち上る。
「リンディ艦長。悪いが、これを預かっててくれ」
「えっ!? ちょっと――」
振り向きもせず酷く気安い様子で、光は私に八つのジュエルシードを押し付けてきた。
「私に使える訳が――」
ないと言おうとして、私は思わず絶句していた。八つのジュエルシードは、お互いがお互いを制御し拮抗状態を保ち続けようとしている。まだ研究などほとんど進んでいないが、ジュエルシードにそのような機能はないはずだった。おそらく、光自身がそのような術式を組み込んだのだろう。その
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