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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり3
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、怪物はまだ倒れていない。石像が僅かに震える。内側からその戒めを解こうと暴れているようだ。
『やれやれ。まぁ、これで何とかなりそうだな』
 リブロムの言葉に応じるように、御神光の右腕が膨れ上がる。それは、見た事のある魔法だった。初めて会った時に喰らった、あの異形の拳だ。いや、少し違う。
 あの時と違い、それは植物のようなもので出来ていて――そして、見るからに毒々しい瘴気を放っていた。
『さぁ、一発かましちまいな』
 異形の拳が、魔力を吸ってさらに巨大に膨れ上がる。その拳を構えた御神光の身体が消え――次の瞬間には、彼は拳の間合いに踏み込んでいた。
「悪い夢はこれで終わりだ」
 拳が振るわれる中、その宣言が妙にはっきりと聞こえ――拳が振るわれると同時、石像が突然起爆した。まるで、その石を生み出してた魔力が急激に燃え上がったように。
「まだ、倒れないのか?!」
 爆風に翻弄されるまま数メートルほど吹き飛ばされた怪物は、それでも立ち上がった。もはや御神光が限界なのは分かっていた。ここからでも分かるほど大きく肩を上下させている彼の身体から――その右腕から立ち上っていた深淵の魔力が全て消え去っている。これで倒れないならもう……思わず背筋がゾッとするが、
『いや、終わりだ』
 リブロムの言葉を肯定するように、突如として怪物の身体が崩れた。炎に放り込まれた蝋人形のように、どす黒いタールのような何かとなって、その巨体は流れ去る。
 そして、
「たす、けて。誰か、助けてよ……」
 その黒い何かの海の中心には、プレシア・テスタロッサの姿があった。全ての力を失い、ヘドロのような何かを身体に纏わせながら――ボロボロになって地面に崩れ落ちた彼女が、その手を伸ばす。
『さぁ、決着だぜ』
 ふらりと、傷だらけの身体を引きずりながら御神光は、彼女の元へと歩き出す。
「待て、御神光――!」
 そこで思い出した。御神光を蝕む『魔物』を鎮める手段。それは、プレシア・テスタロッサの殺害だった。つまり、決着と言うのは……。
「大丈夫だよ、クロノ君。フェイトちゃんも」
 駆けだそうとする僕を制するように、高町なのはは――彼の妹は笑って見せた。まるで何の心配もいらないと言うかのように。
「しかし――」
 問答などしている暇はなかった。その頃には、御神光はプレシア・テスタロッサの傍まで辿りつき、右手を掲げた。
「何をする気だ……?」
 掲げた右腕から、魔力のような輝きが溢れだす。何かを打ち消しているようにも、何かを吸いだしているようにも見えた。よく分からない。それが危険なものなのかどうかも。
「光お兄ちゃんは確かに意地悪だけど――それでも、本当に助けてって言ってる人を見捨てたりしないんだから」
 だが、その輝きは――青白く澄み渡ったその光は酷く優しげだった
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