道化と知りつつ踊るモノ
[5/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
も答えは出ない。首を何度か捻っても、やはり何も分からなかった。
夕に聞いてみるのが速い。黒髪を撫でながら、明は問いかけを返した。
「例えば?」
「戦闘に支障が出た、とか。徐州での戦闘で化け物に身を落とした対価?」
「それだと歪んでない理由にならないと思う……あ、でも身体の支障も含めて何かがあるのかも」
「ん、そうかもしれない。新しく所属した軍で戦って力を示さないのは異常。秋兄は戦えないという確率が五割……ダメ、徐晃隊を指揮するくらいは出来るはずだから、やっぱり違う」
肯定するもやはり否定。二人で考えても分からないなら、これ以上頭を悩ませてもしょうがない。
「ぐぬぬ……ただ戦わないだけで此処まで悩ませるなんて……秋兄恐るべしっ」
「ふふっ、私を策に嵌めれる程の相手。やっぱり秋兄は欲しい」
おどけてみせると、夕は小さく笑った。その愛らしい声が、明の心に何よりの平穏を齎す。
このまま彼女の想い人の話を続けてもいいが……明は夕に聞いてみたい事があった。
「ね……桂花は、どうする?」
「……」
沈黙。
答えるでもなく目を逸らした夕は明の胸に顔を埋めた。すりすりと頬をすり寄せ、甘える姿は子供のよう。
「予定通りならあたしと一緒に烏巣に向かうでしょ? 相手は監視の意味も込めてあたしの隣に並ばせるのが一番だろうし――――」
「連れ出さなくていい」
冷たい声が響いた。一瞬で軍師に切り替わった夕は、昏さ渦巻く黒を明に向けている。
「今回の策が成功すればどれだけの将や軍師が死ぬか分からない。でも、不用意な行動はそれだけで郭図が気付く。出来るだけ桂花とは離れている方がいい。あなたが地獄を作り出す、私達が曹操を捕える、それが勝利への道筋」
例え親しい友であろうと、欲しいモノの為には生贄に捧げる。感情を切って捨てた軍師の論理に、明はゾクゾクと背筋に快感が上る。
――やっぱりこの子はこうでなくちゃ。それでこそ、あたしの愛しいたった一人のお姫様。
「りょーかい。あたしは桂花に離れるように言えばいいんだね」
「ん、それでいい。私の護衛の張コウ隊は二百で十分」
「分かった。且授様の頃から居る奴等を残してくよー」
目を合わせて笑うと、夕も小さく微笑んだ。明の大好きな笑顔だった。
「じゃあ……おやすみ」
「おやすみ」
額に優しく口付けを落として、きゅっと小さな身体を抱き締めた。
温もりが伝わり、鼓動を感じる。
とくんとくんと鳴り響くソレは、彼女と自分が生きている証。
大切な大切な少女をその手の中に、明は微笑んで目を瞑った。
これから行うは一か八かの大一番。自分が彼女を信じる事でこそ、全てが上手く行くのだと心を固めて。
――もし……明が出て行
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ