第八章
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第八章
「だからよ。やるわよ」
「わかったわ。じゃあまずは」
「ジャージ。あるわよね」
「今は持ってないわよ」
ジャージがあると聞かれて顔を少し顰めさせる朋絵だった。
「今はね。だってここあんたの家だし」
「あっ、そうね」
「ないわよ。一旦私の家まで戻るわ」
「それには及ばないわよ」
ところが亮子はこう朋絵に言葉を返すのだった。
「それにはね」
「どういうこと?」
「あんたと私って背とかウエストは対して変わらないじゃない」
「そういえばそうね」
ただし胸は朋絵の方が、尻は亮子の方が大きい。実は二人共密かにこのことを自慢していたりする。二人のささやかな自信でもある。
「じゃあ。貸してくれるの?」
「ええ。それで終わったら」
「シャワーね」
「お風呂入れるわ」
「お風呂?」
「二人で入りましょう。ついでだから」
「ちょっと。それって」
今の亮子の提案に苦笑いになる朋絵だった。
「妖しいわよ、まるで」
「レズだっていうの?」
「だってね」
また苦笑いを浮かべる朋絵だった。
「一緒にお風呂って」
「そうかしら」
「そうかしらって。女二人でね」
「普通じゃない」
亮子の方はそれをおかしいとは全く思っていないのだった。それは今の彼女の言葉にもはっきりと出ていて隠されているところはなかった。
「それも。違うかしら」
「シャワー浴びると考えればそうかしら」
「そうよ。それだけじゃない」
「言われてみればそうね」
亮子の言葉に考えを変えた朋絵だった。
「それもね」
「それだけよ。それじゃあね」
「ジャージ。貸してくれるのね」
「ええ」
この話はすぐに進んで整った。
「色はどれがいいかしら」
「別にどれでもいいわ」
借りるのだからそれは構わないのだった。
「どれでもね」
「じゃあ赤でいいわよね」
「随分派手な色、持ってるのね」
「他には黒とか青とかよ」
「まあそっちは普通の色ね」
ジャージの色についても話す。
「とにかく。今は走ってよね」
「そう、体力つけて」
「ダイエットして」
二人の目的はそれぞれだった。
「そうしてちゃんとしてから」
「山とか海に行きましょう」
「そういうことね」
こう話を交えさせてそのうえでランニングに向かう二人だった。こうして身体を整えていき亮子はやがて。夫である宗重と一緒に山に向かうのだった。
二人は登山の服装になっている。背中にはリュックがあり帽子まで被っている。そうした服で今二人である山に足を踏み入れようとしていた。
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