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山の人
第七章
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 昔の記憶は残る。しかし今とは違う。この二つのパラドックスが亮子にも深く強くかかっていたのだった。これは誰でも同じである。
「今とはね」
「違うの」
「だからよ。まあ山によるけれど」
「体力ね」
「私もね。もうかなり泳いでないし」
 朋絵は自分自身についてもここで言及した。
「その辺りは不安だけれど」
「じゃあ。一緒にやる?」
「一緒に?」
「身体動かす?」
 こう朋絵に提案する亮子だった。
「走るか泳ぐか」
「どっちかにするってこと?」
「それか両方」
 亮子も言う時にはかなり言う。
「どうかしら」
「じゃあ走る方かしら」
「泳がないの?」
「だから。まだ水着になる勇気はないのよ」
 朋絵はこう言って顔を曇らせたのだった。
「今はね。だからよ」
「そう。だからなの」
「そういうこと。とりあえずはね」
「走るのね」
「ある程度体力がついてスタイルが整って」
 朋絵は亮子のことも考慮に入れて述べた。
「それからよ。いいわね」
「わかったわ。それじゃあそういうことでね」
「お互いの旦那さんについてくだけの体力はつけましょう」
「うちの人のねえ」
 亮子は朋絵の今の言葉に腕を組んでしまった。
「それはまた大変ね」
「うちもね」
 ここでは亮子も朋絵も事情は同じだった。
「うちの旦那も体力はかなりだから」
「そっちもなの」
「全く。体力馬鹿の旦那を持つと苦労するわね」
「そうね」
 この辺りは自分達を中心に考えていた。女の目から見ての言葉である。
「まあそれでもやりましょう」
「そうね。旦那と一緒にやる為にはね」
「努力も夫婦円満の秘訣のうち」
 朋絵はこの言葉を出した。
「そういうことね」
「旦那には気付かれないようにね」
「主婦も大変ね」
 朋絵は今度はこんなことを言って苦笑いを浮べた。
「全く」
「けれど。決めたら」
「ええ」
 そこから先はもう決まっていた。
「やりましょう。二人でね」
「もう早速今日から?」
「思い立ったが吉日よ」
 やはり亮子はいざという時も思い切りがいいようだ。

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