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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴486年(後篇) 〜
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いえ軍の実力者であるヴァレンシュタインが不信任を表明する、その影響を考えたのだろう。

「皆が思うであろうな。ミューゼルが頼りにならぬから新たに二個艦隊を編成した。ミューゼルが頼りにならぬから総司令部にメックリンガーを入れたと」
「……」
「そしてミューゼルが頼りにならぬからヴァレンシュタインは非合法な手段を取らざるを得なかった。その所為で軍から追放されようとしていると」
二人の顔は蒼白だ。多分、私も同様だろう。以前から容赦の無い男だとは思っていたがここまで冷酷になれるのか、そういう思いが有る。

メックリンガーの指揮が拙ければ責められるのはヴァレンシュタインだった。だがメックリンガーは十分過ぎる程に戦果を挙げた。誰もメックリンガーを、ヴァレンシュタインを責める事は出来ない。そしてミューゼルでは同じことは出来なかったに違いないと思う筈だ。

ミューゼルは厳しい視線に晒されるだろう。これまでも孤立していたがこれまで以上にあの男は孤立する筈だ。だがそれに耐えて実力を養い機会を待たなければならない。そして誰もが認めるだけの武勲を上げる……、それが出来て初めて皆から認められるだろう。出来るかな? かなりの忍耐が必要とされるが。

おそらくヴァレンシュタインは出来ないと見ている。そしてミューゼルは焦りから自滅すると見ている。私も同じ思いだ、ミューゼルは自滅する。ヴァレンシュタインはただ黙ってそれを見ているのだろう。私も黙って見ている。ミューゼルよ、簒奪を目指すならヴァレンシュタインの陥穽から這い上がって見せろ。それが出来たら多少は認めてやろう。








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