暁 〜小説投稿サイト〜
外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴486年(後篇) 〜
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
はりただの無責任な噂なのでしょうか?」
「……分からんな、だが……」
「……」
「ミュッケンベルガー元帥が人事不省になったにも拘らず大勝利を収めたのだとしたら……」
「……だとしたら?」
「何かが起きたのだろう」
今度はヘルトリングが唸り声を出した。

総司令官が人事不省になった。事実なら軍は混乱する。とてもではないが大勝利を収める事など不可能なはずだ。良くて引き分けだろう。だが現実には遠征軍は大勝利を収めた。辻褄が合わない、何かがおかしい、不可解なのだ。報告者を含めた遠征軍将兵が混乱しているのもそれが理由だろう。私もヘルトリングも混乱している。

やはりミュッケンベルガーが人事不省というのはデマなのかもしれん。しかし総司令官の健康に関してデマが流れるなど有るだろうか? 有っても直ぐに打ち消されるだろう。そうすれば混乱は収束する筈だ。それが無いという事はやはりミュッケンベルガーは何らかの理由で人事不省になった。そう見るべきではないだろうか。

「ヘルトリング、ミュッケンベルガー元帥が人事不省になったとすれば誰かが代わりに指揮を執ったはずだ。誰が指揮を執った?」
「それが、はっきりしないのです。総司令部が指揮を執ったようですが……」
「総司令部? それも妙な話だな」
ヘルトリングが“はい”と頷いた。参謀達が合議で指揮を執ったと言うのか? それで大勝利? 有り得ん話だ、空中分解して大敗北という方が未だ有り得る。どうも何かがおかしい。

「ちぐはぐだな、何一つ整合性が取れん」
呟くとヘルトリングがこちらをじっと見た。
「如何した?」
「しかし御味方は大勝利を得ております」
また唸り声が出た。そうなのだ、どうして勝てるのだ? 勝てる要素がまるで見えてこない。

「ヘルトリング、ミュッケンベルガー元帥が人事不省になったとして本来なら誰が指揮権を継承する筈だった?」
「……序列から言いますとミューゼル大将です」
「……」
それを早く言え! ミューゼルか、いきなりキナ臭くなってきたな。考えているとヘルトリングが“閣下?”と声をかけてきた。ヘルトリングはこちらを窺うような表情をしている。

「引っかかるな」
「はい、例の件が有りますからどうにも引っかかります」
「そうだな、……ヴァレンシュタインに動きは」
「特に目立ったものは有りません」
無関係か? しかし気になる。ヘルトリングがここに来たのはミューゼル、ヴァレンシュタインが絡んでいると思ったからかもしれない。だが遠征軍はティアマト、ヴァレンシュタインはオーディン、関係が有る? そうは思えん。

「もう少し噂を追え、どうも気になる。ひょっとするととんでもない裏が有るかもしれん」
「承知しました」
ヘルトリングがゆっくりと頷いた。ヘルトリングの表情には先
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ