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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴486年(後篇) 〜
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とも一度は私の耳に入れた方が良いと判断させた話だ、聞かなければならない。
「私に報せたい事が有ったのだろう、何を聞いた?」
ゆっくりと囁くように話しかけた。この方がヘルトリングの緊張もほぐれる筈だ。

「……昨日の第三次ティアマト会戦ですが、妙な話を聞きました」
「うむ、どんな話だ。教えてくれ」
「戦闘の最中に、……ミュッケンベルガー元帥が人事不省に陥ったと。指揮を執れなくなったと。そのような噂が遠征軍に流れているそうです」
まじまじとヘルトリングの顔を見た。怒鳴られると思ったのか、ヘルトリングが身体を竦ませた。

「本当か?」
いかんな、声が少し掠れ気味だ。だがヘルトリングは怒鳴られなかった事でホッとした様な表情を見せた。
「噂の真偽については分かりません。しかし遠征軍にはそういう噂が流れているとこちらの情報源の一人が報せてきました」
思わず太い息を吐いた。どういう事だ?

「戦闘中負傷したという事か?」
「いえ、それが……」
「それが?」
問い掛けるとヘルトリングが困惑している。
「病気だと言うのです」
「病気?」
「はい」
熱でも出たのか? 高熱で人事不省? どうもよく分からんな。

「少し体調を崩した、一時的に指揮権を委ねた、それが大袈裟に広まっているのではないか?」
「……そうかもしれません。しかし遠征軍将兵はかなり混乱しているようです。情報源が言っていました」
「混乱している? 遠征軍内部で混乱が生じている、そういう事か」
だとすれば状況は深刻と言って良い。一体何が起きているのだ? ヘルトリングに視線を向けたがヘルトリングは困ったような表情で首を横に振った。

「分かりません。彼もかなり困惑をしていました。躊躇いながら小官に報せてきたのです。何かが起きた様だが何が起きたかが良く分からない、ただ何かが起きたと」
何かが起きた……。どうもはっきりせんな、普通なら報告はもっとはっきりしろと怒鳴り付ける所だが……。

待てよ、これは報告なのか? むしろ警告と受け取るべきではないのか? 警告なら何かが起きたと言うのは十分に意味が有る、調査をしろという事だ。ヘルトリングも報告とは言っていない、耳に入れたい事が有ると言っていた。つまりヘルトリングも警告と受け取ったのではないか? だから曖昧な内容でも報せに来た。思わず唸り声が出た。

「ヘルトリング、第三次ティアマト会戦は帝国軍の大勝利に終わった、そうだな?」
ヘルトリングが頷いた。
「はい、反乱軍に二万隻近い損失を与えました、止めこそ刺せませんでしたが大勝利と言えます」
「ミュッケンベルガー元帥が人事不省になったにも拘らずか? そんな事が可能かな、ヘルトリング」
私が問い掛けるとヘルトリングは考え込むような表情を見せた。

「……や
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