第十二章
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わからないものだった。
「同じだったのね。場所が違うだけで」
「違うって何が」
「ううん、何でもないの」
やはりここでも自己完結してしまっていた。
「それだけだから」
「何でもないの」
「そうよ。場所が違うだけで同じだから」
夫にその微笑を見せてまた述べた。
「じゃああなた」
「うん」
「これからもね」
話を自分で終わらせたうえでの言葉であった。
「一緒に山登りましょうね」
「そうだね」
これまでの話はわからなかったがそれでも今の話はわかったのだった。流石にこの話は彼でもわかるのだった。
「これからもね。一緒にね」
「ええ。一緒に」
そして話は進んだ。
「ずっとね。これからも」
「うん。ずっとね」
その毛深い、髭の濃い顔で微笑む宗重だった。何はともあれ二人はこれからも仲良く夫婦二人で山に登ることを約束するのだった。亮子にとっては夫をあらためて愛する場所になったその山に。その夫が心でははっきりとわからなくてもそれでもであった。
山の人 完
2009・2・16
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