第三章
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ネに述べる。
「これなんだけれど」
そう言うとその青い冠を出した。そしてそれをマリーネの頭に被せたのである。
「あっ」
「どう、これ」
「これって」
マリーネはその冠を見上げた。見ればそれは彼女の赤い髪に見事にかかっていた。
「私への贈り物?」
「うん、他に考えられなかったから」
彼は答える。
「こんなのしかできなかったんだ。御免ね」
「御免ねって」
マリーネはその言葉を聞いて述べる。その間ずっとそのヤグルマギクの冠に手をやって上を見上げている。
「知ってた?私ね」
「どうしたの?」
「どうしたのじゃなくて。私大好きだったのよ」
まだ上を見ている。ヤグルマギクを。
「ヤグルマギク。それをくれるなんて」
「よかったの?」
「ええ」
あらためて答える。その顔はにこりと笑っていた。
「有り難う。このことずっと忘れないわ」
「そんなに」
「ええ。だからね」
マリーネはここで言う。
「私、知っていたのよ。貴方のこと」
「えっ!?」
フリッツはその言葉に思わず目を見開いた。それと共にギクリとした。
「何を!?」
つい聞いてしまった。これがバランスを崩してしまったことだということは彼は気付いてはいなかった。
「何をって」
マリーネはそんな彼に微笑み返す。そのうえで言う。
「わかってるでしょ?」
「あっ、うん」
答える。答えた時でもう勝負は決まってしまった。
「一緒になりましょう」
マリーネは言った。
「二人で」
「いいの?」
「ええ。これが貴方の気持ちだってわかったから」
それで充分であった。マリーネは今心に冠をもらったのだから。それが何よりの誠意だとわかっていたから。
「だから」
「じゃあ」
マリーネはフリッツの両手を受け取った。そして握る。青い冠は二人のこころを重ね合わせた。それはまるで魔法のようであった。
青い冠 完
2007・2・1
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