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SAO−銀ノ月−
第七十一話
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みなくては分からない。キリトが大事そうにアクセス・コードを仕舞い込むと、NPCに注文していた各自の飲み物が届けられる。

「……ふぅ」

 とりあえず一服。リズとセットで頼んだ熱いコーヒーが俺が身体に染み渡る。ユイまでもが何か飲み物を頼んで飲んでいたので、レコンが不思議そうに目を丸くしてユイのことを観察している。本来のナビゲーション・ピクシーとやらは、食ったり飲んだりするのだろうか。

「そのカードが何なのかは分かった。……問題は、何でそれが落ちてくるのか、ってこと。説明してよね、キリトくん」

 リーファが注文したティーカップを口に運びながら、キリトに強い口調で詰問する。……こればかりは、ユイに説明してもらう訳にはいかない。だが、キリトが言いよどんでいるのを見て、代わりに俺が口を開く。

「キリト、なんなら……」

「……いや……俺が話す。全部」

 それが俺の責任だから――と言葉は続いていき、少し経った後にキリトは訥々と語り出した……この世界に来た、目的のことを。SAOのこと、アインクラッドのこと、ユイのこと、俺たちのこと……未だに目覚めぬ生還者のこと。

 かなり掻い摘まんだ上にところどころで詰まりながら、しかもいきなり訳の分からない話だったが、幸いなことにリーファもレコンも冷静に説明を聞いてくれた。もちろん、信じがたいという感情は拭えないものの、むしろそう考えた方が自然だ、とも。……しかし、SAO未帰還者の話ともなれば、二人の顔色がさっと変わる。

 SAO事件のショックは経験者でなくとも大きい。その反応は予想していたことだったが……キリトの恋人が囚われていることを聞いた時、リーファの反応は予想以上に大きかった。飲んでいたティーカップを手から取り落とし、唇をわなわなと震わせて落ちたティーカップのことを気にも止めない。

「リーファちゃん……?」

「レコンは黙ってて。キリトくん……その、恋人の名前は……?」

 心配するレコンのことを気にとめず――それは先程リーファの制止を聞かなかったキリトのようで――恐る恐る、といった様子でキリトにそう聞いた。キリトは怪訝な表情をしながらも、別に隠すことでまない、しっかりと愛する人の名を告げた。

「――アスナ」


「……お兄ちゃん……なの……?」

 キリトからそう告げられたリーファは、声を振り絞ってそれだけ問い返した。キリトを兄として呼ぶ存在はただ一人、俺も彼女のことは知っている。

「スグ……?」

 リーファはキリトのその言葉に応えることはなく、背中を向けたかと思えばすぐにメニューを操作し始め、ログアウトのボタンを押してこの世界から消えていく。俺たちはもちろんのこと、隣にいたレコンにすら止める間もない。

「直葉ちゃん!?」


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