追憶-レミニセンス-part1/恋するルイズ
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双月の蒼紅の明かりが照らす中、アンリエッタは、城の自室のバルコニーが見える窓際に立って夜のトリスタニアを寂しそうな目で見下ろしていた。今回ルイズとサイトに、街の貴族の平民に対する横暴の真相解明の任を、シュウに改造レキシントン号と例のゴーレムの研究を任せたその日、日の光に照らされながら楽しそうに(実際は結構揉めていたが)喋り合っていたルイズたちを見ている時、ちょうど日陰の中に立っていた彼女は窓ガラスに触れていた手をぎゅっと握った。
彼らには傍にいてくれて、精神的に支えてくれる人がいる。特にルイズ、あの子には大事に思っている男性が…一人の大事に思う異性が…使い魔さんがいる。たくさんの友人たちに囲まれてもいる。それに引き替え、一国の姫君である自分にはそういった人間がいない。
ルイズには、自分が持っていないものであり、自分が最も欲しているもの全てを持っている。
(ああ、ルイズ・フランソワーズ…あなたが羨ましいわ)
父の喪に服している母はもちろん信頼できる。でもいずれ自分は時期に女王となるのだからいつまでも甘えていられない。マザリーニ枢機卿は一人の人間としても信頼に足る人であるが、仕事柄上感情的なことはあまり口に出そうとはしない。他の重臣たち?話にもならない。彼らは同じ国の同胞相手にも、国の治安と平和より権力欲しさに腹の探り合いを繰り返している。怪獣という人類共通の敵が現れたというのに相変わらずだった。しかも、ルイズが証拠をつかみアニエスが逮捕してきたチュレンヌ徴税官は、『ある人物』から怪獣を手に入れ、その暴力的な力を盾に町民に多大な被害と迷惑をかけたそうじゃないか。
それ以前にも、名家出身にして偉大なメイジ、そして大切な幼馴染の婚約者だったワルドの祖国に対する裏切りと、アンリエッタにとって最愛の人間への行為。始祖がお許しになっても自分だけは絶対に許さないと断言できる。許せないと言ったら、レコンキスタの革命を騙る侵略行為もだ。何がハルケギニアの統一と聖地の奪還だ。怪獣や多世界の技術という圧倒的な力を使ってアルビオンの同胞たちの街を蹂躙し、トリステインにも侵略のために土足で踏み込み、王党派の罪なき人々を虐殺した忌まわしき組織。
どこもかしこも、現在の貴族はあまりにも汚い人間だらけ。いちいちそんな人間たちの顔色をうかがいながら、女王としてこれから政務を全うしなければならないなんて、嫌で嫌で仕方がない。たとえ我儘と言われようと、誰が権力に飢えた獣の相手をするのを好むのか。無駄に疲れるとしか言いようがなかった。
本当なら、国の未来も何もかも捨てて、いっそこのままどこかに飛んでいけたら…。それも、愛するウェールズと共にどこまでも…。
でも、現実が常に自分をそこへ引き戻し、自由を求めることさえ許そうとしてくれない。ろうそくの火の光に照らされる、マザリーニから
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