第三章
[8]前話 [2]次話
第三章
「元気よ」
「そうか。それで今日はどうだったんだ?」
「外に出てゲーム買ってね。DVDもレンタルして」
「それだけかよ」
「それだけよ」
本当にそれだけなのだった。
「それでお昼に帰ってこうやって」
「ゲームか」
「恋愛育成ゲームね」
それをしているというのである。
「ずっとやってるのよ」
「それで面白いか?」
「まあね」
ぼんやりと画面に顔を戻して応える。とはいってもあまり面白くなさそうな顔と声だ。
「それはね」
「いいのか?本当に」
「いいけれど」
「あまりそうは見えねえけれどな」
健人は応えながらその手に持っていたものを床に落とした。それは。
「何よ、それ」
「何よって見ればわかんだろ?」
そう言うとであった。ビニールの中に赤と黄色の模様が見える。黄色がアーチになっている。優里亜もそれを見て何となくわかった。
「マクドね」
「そうだよ」
まさにそれだというのだ。
「差し入れな」
「ビールは?」
「買って来たよ」
それもあるというのだ。
「御前休みになるとビールだからな」
「気軽に飲めていいのよ」
「だからか」
「そうよ。あんたも飲むでしょ」
「俺はいい」
健人はそれはいいとした。断るのだった。
「それはな」
「いいの」
「ああ、いい」
また断る彼だった。
「別にな」
「何よ、つれないわね」
「だから明日また仕事なんだよ」
部屋のテーブルの前に腰を下ろす。丁度優里亜がいるベッドと画面の間に座る形になった。ガラスのテーブルの上にはネットで調べた攻略について書いたノートやポテトチップスの空けられた袋がある。他にはファッション雑誌やそうしたものもテーブルの周りにある。
そうした雑然とした中に座って。健人は彼女に言った。
「なあ、明日な」
「何?」
「部屋掃除しろよ」
その雑然とした部屋を見回しながらの言葉だった。
「いい加減な」
「掃除?」
「こんなんじゃダニ涌くぞ」
だからだというのである。
「ダニがな」
「ダニがなのね」
「そうなったら大変なことになるぞ。喘息とかなりたくないだろ」
「まあそれはね」
「だったら掃除しろ。バイクの手入れは欠かさないのにな」
「ちゃんと一ヶ月に一回掃除してるわよ」
優里亜の口は減らない。
「一応ね」
「毎日しろよ、毎日」
「仕事で疲れてるから無理よ」
「今は休みだろ?」
「いいじゃない。とにかくね」
「ああ」
「明日することは決まったわ」
それは決まったとはいう。しかしであった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ