第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十一話 緋色の宵 前篇
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――――その穢れの背後から白刃を振り下ろそうとしている黒髪の男の姿だった。
次の瞬間、鋭い風切り音と共に目の前にいた穢れが消え代わりに白刃を携える黒髪の青年が立っていた。
「……嫌だ嫌だ、完璧に不意を突いたと思ったんだけどな〜。まさか躱されるなんてね」
青年は苦笑いを浮かべながら独り言の様にそう呟く。
その声を聴いた時、輝夜の中である言葉が乱れ舞った――――あり得ない、と。
知っている、否覚えている――――正確には忘れる事を許されなかった。
でもあり得ない――――死んだ筈だ。
でも自分の記憶が叫んでいる――――本物だと。
でもあり得ない――――生きていられる訳が無い、彼は唯の人間だったのだ。
でも確信できる、断言できる――――理屈何てどうでもいい。
自問自答を己の中で繰り返していた輝夜に青年は視線を向け声をかけてくる。
自然に、当たり前の様に、混乱している彼女を小馬鹿にするように――――。
「やぁ大丈夫かい?お姫様」
声も、姿も、自分に向ける笑顔も殆ど記憶そのままに――――。
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