第四章
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それは勘で感じ取っていたのであった。
「これからね」
こう言うのだった。そしてそのまま喫茶店に向かった。
スターリンもだった。彼の背中が消えていくのを目で見てからだ。言うのだった。
「あの画家は」
「どうしたんだい?同志」
「いや、何かあるな」
鋭い目での言葉だった。
「いづれは」
「いづれはかい」
「あの男と私は同じなのかも知れない」
こんなことも言うのだった。
「同じだから将来何かがある」
「同じっていうと共産主義者かい?」
アターニフはそれかと思ったのだった。
「それなのかい?ひょっとして」
「いや、この街にいる同志達は全員知っている」
スターリンの記憶は確かだった。それこそ相当なものである。ありとあらゆることも細部まで何時までも覚えている程であるのだ。
「しかしああした人間はいないな」
「じゃあ誰なのだ?」
「それはわからない」
そこまではスターリンにもわからなかった。
「だが」
「だが?」
「あの男と私は同じだ」
また言うスターリンだった。
「やがて何かが起こる」
「そうなのか」
「さて、同志よ」
アターニフへの言葉だった。
「行くとしよう」
「そうだな。同志達が待っている」
「革命の為に」
こう言って街中に消えるスターリンだった。
これは公にはされていないがヒトラーとスターリンは同時期にウィーンにいた。若しかすると両者はすれ違っていたのかも知れない。二人の独裁者が互いの顔をお互いが知らないうちに見ていたのかも知れない、これもまた歴史の神の悪戯であろうか。
すれ違い 完
2009・11・29
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