暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜神話と勇者と聖剣と〜
DAO:ゾーネンリヒト・レギオン〜神々の狂宴〜
第二十話
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
分と同じ存在が消えたことで、恐怖が消えたのか、そのシャノンをなだめるために起き上った刹那。

「お兄様……」
「悪い、刹那……消せ、なかった」
「いえ……お兄様の言葉だけで、十分です」

 だが、兄妹の会話に、水を差す存在は消えていない。もちろん、消えるつもりもないのだろう。

「さて、シャノンの言葉に、いかほどの価値があるのか。まぁ、その価値は、ある意味では凄まじく重大だったのだろうけど」

 《主》が、にやりと笑う。

「……何が言いたい?」
「いや何、キミにとっても懐かしい人に会わせてあげようと思ってね。なに、はっきりと思い出すだけさ」

 意味深な、《主》の言葉。彼はその右手を高々と掲げると、唱えた。

「『おいで、《ガラディーン》』」

 真紅の魔法陣が、玉座の周囲を取り囲む。じゃらり、と、漆黒の鎖が、どこからともなく溢れ出し、その中央にわだかまっていく。

 いつしかその鎖は、人ひとりと同じくらいの高さまでわだかまって――――弾けた。

 黒い鎖がはじけ飛んだその中には、一人の少女がいた。年齢は十八歳ほどか。くせ毛と和服が特徴的な、穏やかだけれどもどこか苛烈そうな表情の少女だ。閉じられていた瞳が、ゆっくりと開かれる。その色は、《灰色》。混沌の色。

「誰だ……?」

 セモン達には、見覚えのない人物だった。

 シャノン/陰斗とは、小学校三年生の時から大体行動を共にしている。彼は交友関係が異常に狭いので、彼の知人とは大体セモン/清文とハザード/秋也も面識がある。

 だが、その中に、この灰色の瞳の少女は――――ひいては、それと似た少女はいなかった。

 しかし。

 彼女の出現が、シャノンを、大きく動揺させたのは、事実だった。

「あ……ああ……あああああっ!!?」

 目を見開いて、絶叫するシャノン。その顔の浮かんでいるのは、驚愕と、困惑と、恐怖と……見当もつかない、混沌とした何か。あんな表情を彼が取るのを、セモンは一度も見たことがなかった。

「シャノン……?」
「お兄様……?」
「そんな……そんな馬鹿な……っ! どうして、どうして君が……キミがこんなところに……っ!!」

 膝をつき、頭を抱えるシャノンは、まるで懺悔をしているようで。

 その背中は、ひどく小さく見えた。

 震える彼の唇から、聞き覚えのない名前が、紡がれる。

「『そう』……!」
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ