第九章
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そこに向かうと。
「いい感じだな」
また太宰のコーナーの前に向かう。そうしてその太宰の隣にある漱石の本を手に取った。すると彼女はこちらに顔を向けてきた。
(来たな)
内心で会心の声をあげていた。これでよし、と思った。しかしそれだけではなかった。
「あの」
「!?」
「うちの学校の」
「えっ!?」
何と彼女が声をかけてきたのだ。
「人よね」
「あっ、うん」
彼は戸惑いながらそれに返事をした。
「そうだけれど」
とりあえずさりげなくを演じた。しかしそれにはかなり苦労したのも事実だった。
「何かあるの?」
「同じ学年で」
御木本は今度は彼の学生服の左襟のクラス章を見て述べていた。
「F組なの」
「そうだよ。F組」
また彼女に答えた。
「それがどうかしたの?」
「名前何ていうの?」
「加藤っていうけれど」
彼は問われるまま名乗った。
「加藤啓介っていうけれど」
「そうなの。加藤君ね」
「うん」
ここでもさりげなくを演じた。
「そうだよ」
「私は御木本っていうの」
今度は彼女から名乗ってきた。
「御木本優っていうの。クラスは」
「何処?」
知ってはいたが知らないふりをしたのだった。
「三年A組」
「そう。A組なの」
「そうよ」
また答えたのだった。
「A組なの。知らないわよね」
「ええと」
「それでもいいから」
答える前に言ってきたのだった。
「私、地味だから」
少し自嘲めかした笑みを浮かべての言葉だった。
「クラスでも目立たないし。だからね」
「だからいいっていうのかよ」
「知らなくてもね」
こう言ってまた自嘲めかした笑みを浮かべる。
「いいわ。別に」
「今は知らなくてもな」
ところがここで。加藤は自然に言葉を出すのだった。
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