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101番目の舶ィ語
第五話。月隠のメリーズ・ドール
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いだろう?」

これは完全に俺の我儘だ。
本当なら女性をそんな目にあわせたくない。
だけどどうしても殺さないといけなくなった時、未練を残すような、そんな殺しをするのだけは辞めてほしかった。

「…………貴方は」

俺に抱かれたまま、俺の腕の中で、低く押し殺したような声が聞こえた。

「さあ、満足するまで刺せ!
だけど満足しないのなら、もっと強く抱きしめるよ?」

声を張り上げてそう叫ぶと、俺の腕の中で彼女はもぞ、っと動いて。

ただ一言、呟いた。

「貴方は真性のバカですね」

「え?」

彼女の言葉に俺はうっかり彼女を『見そう』になってしまい______直後。

ゴヅンッ!

「ぐはぁ……」

顔面に凄まじい勢いで頭突きを喰らって、悶絶した。

「遠山家の奥義を……」

痛みに悶絶しているうちに、いつの間にか彼女は俺の手の中からいなくなっていた。


ピロリロリーン。

とDフォンから音がして、赤かった発光が青白い光に変化していた。
部屋を見渡しても彼女の姿はどこにもなかった。

「助かった……のか?」

青白い光は消えて、元の静かなブラック携帯に戻った。

「……みたい、だな」

耳を澄ませば外を走る車の音、道を歩く人の足音、虫が鳴く小さな音、家の中から聞こえる、家族の生活音が聞こえてきた。
どうやら俺は元の空間に戻ったらしい。

「兄さーん」

一階から俺を呼ぶ従姉妹の声が聞こえる。この声は多分、本当の理亜の声だろう。

どうやら俺は……。
無事に、生き延びたみたいだ。

「兄ーさん。聞こえてますかー?」

理亜の声が再び聞こえてきた。
今日はいつもより優しくしてあげよう。
そんなことを想いながら俺は一階に降りていった。

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