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101番目の舶ィ語
第五話。月隠のメリーズ・ドール
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よ。
ロアという謎の言葉。
ロアというのは彼女みたいな存在を示す言葉なのだろうか。
しかし、それを聞いて頭によぎったのは……悲しいな、という思いだった。

「私はこんなことで消えるわけにはいかないのよ。
あの子を守る為なら誰だろうと殺す!
だから無理やりでも振り向かせて……」

彼女には彼女を待つ妹がいるみたいだ。
妹を悲しませたら駄目だよな。

「仕方ねえか……悪い、振り向くぞ」

「え?」

突然、起き上がって彼女と距離を取った俺に彼女は不意をつかれたのか、素っ頓狂な声を上げて驚く。

振り向かないようにアドバイスしてくれたキリカと目の前の彼女に謝罪して、俺は彼女を見ないように体を反転させて______

「……ッ??」

彼女にそのまま、抱きついた。

彼女の体と、ボロボロのドレスの肌触りが感じられる。
ツン、と鼻を刺激するのは血の匂いだろうか。
薄い色の金髪がチラッと見えたがなるべく見ないように顔を上げた。
それと同時に______来た!

ドクン、ドクンとあの血流が芯に集まるのがわかる。
抱きついた感触では彼女はキリカや理子、白雪とは違い、どちらかと言えばアリアみたいな体型をしている。
そのせいか血流の流れも速い。

俺が振り向いても死んでないのは理由がある。
何てことはない、『振り向いた』が『相手を見る』まではしていないからだ。

「な、なんの、つもり?」

「昨日、電話に出なくてごめんね」

「……何を言われているのか、わかないのだけど」

「捨てられた人形の寂しさの化身、みたいなものが君なんじゃないのかって思って」

だから、捨てられた人形を見て気を引いた人に現れる化け物。
どれだけ寂しいか、どれだけ辛い気持ちでいたのかを誰かに知らせたい、思い知らせたい。その強い想いの化身が彼女なのではないかと。
それに彼女は言った、消えたくないと。
あのままでは彼女は消えてしまう。
女性をそういった辛い気持ちにさせたままでいるなんてことは今の俺にはできない。

「だから……まあこのままザックリ殺されてしまうのかもしれないけどさ、でも、だったらせめて……寂しくないようにしてやりたいって思ったんだ」


「さ、寂しいとか……」

「いいんだよ。寂しい時は寂しいと言ってもいいんだ。
人間は……いや、人形も一人では生きていけないものなんだからさ。
だから何ていうかさ、俺を殺すのは寂しくなくなってからにしてくれ。
じゃないと俺に未練が残るからな」

「……未練?」

「君がどんな存在だろうと、君が寂しさのあまり人を殺してしまったら悔しい、って思う未練だよ。
どうせ殺されるのなら、相手が『あー、殺し、超スッキリした!』って気持ちでないと……悔し
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