第五話。月隠のメリーズ・ドール
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いんでしょう?」
自身の近しい人になりすます。
彼女のやり方がそうなら、この先輩も……。
『クスクス……あはははははははははははははは!』
「許せないな、君だけは……」
女性の声を姿を利用する。
相手の許可も取らずに好きなだけ利用する。
そんな事、許せるわけないだろう。
ピピピピピッ。
Dフォンが鳴り響く。
俺は勝手に繋がる前に自分から先に電話に出た。
「もしもし」
『もしもし私よ。今、貴方の部屋の前にいるの』
「知ってるよ」
『自分から電話に出るなんて。そんなに早く死にたいのね』
「そのつもりはないが……少し君と話しがしたくてね」
『クスクス……ねえ、ドアを開けて?中にいるのでしょう?』
「いない、って言ってもバレているだろうしな」
『開けてくれないのなら、私から入るわね』
ぷつっと電話が切られた。
会話も何もあったものではなかった。
彼女はどうやらアリア並みにコミュ力ないらしい。
「後はもう、だな」
絶対に振り向かない事。
これを実証すればいい。
どうやれば振り向けないか。
俺はヒステリアモードの論理的思考力で考えた。
背後を振り向かないようにするのには、マズ、相手が見えないようにする。
後ろを向けない状況を作り出す。
その為には。
「……よし、これなら振り向けない」
俺は部屋の壁に背中を当てるようにして立ち、視界を遮る為に、机の中に入っていたアイマスクを被った。
背中を壁にくっつける。
視界を遮る。
古典的な方法だが、これなら相手に背後を取られることも、相手を見ることもできない。
後は朝が来るのを待つだけだ。
来るなら来てみろ、なんて思っていた俺は……。
数分経ってもDフォンに着信がないままなのと、ヒステリアモードになっていたせいか脳神経に負担がかかっていた事もあり、いつの間にか意識を落として背中を壁につけたまま、座り込んで眠りについていた。
2010年5月11日23時30分。
「……んあ?」
目が覚めた時、外はすっかり暗くなっていた。
いや、アイマスクをしているせいか暗く見えてだけかもしれないが。
「……寝ちまった、のか」
……俺は確か……。
都市伝説でよく聞く、『もしもし私よ……』という人形に追いかけられていたはずだ
リコちゃん人形とか、メリーさん電話とか、そう言われるものに。
「もしかして……夢か?」
そう思い体を起こそうとした、その時______
「もしもし私よ。今、貴方の後ろにいるの」
耳元で聞こえてきたその声に、俺の体は一瞬で凍りついた。
直後、『夢のはずないじゃないか!』と気づいたのと、もう一つ。
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