第五話。月隠のメリーズ・ドール
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なのか、ヒステリアモードの血流の高まりによりものなのかはわからない。
俺は後ろを振り向かないように、観念しながら瞳を閉じた。
しかし、その時聞こえてきたのは……。
「兄さん?帰っているのですか?」
聞こえたのは、馴染み深い従姉妹の、理亜の声だった。
「り、理亜か?」
「はい。どうしたのですか?ドアを開けてください」
「ああ、ごめんよ……」
緊張感から一気に解放されたせいか、足腰の力が抜けていく。
妹のように可愛がっている従姉妹の、クールな物言いにこんなに安心できるなんて、思っていなかった。
ヒステリアモードの今なら彼女のどんな願いも、我儘でも聞いてやりたいと思ってしまう。
だが……。
「どうしたのですか、兄さん?早くドアを開けてください」
「なあ、理亜。家の前に誰かいなかったか?」
ドアの前に行き、彼女に語りかけた。
「誰か……ですか?」
「ああ、ボロボロの服を着た金髪の女の子とか……」
「いませんでしたよ。そんな事より、兄さん。早く開けてください」
「……なあ、理亜。どうして俺の部屋に入りたいんだ?」
「どうして、って。そんなのどうしてでもいいじゃないですか。早く開けてください」
「……なあ、理亜。どうして」
「なんですか、もう。いいから開けて、それからお話ししましょう」
「どうして、お前はドアに触れていないのに、ドアが閉まってるって知ってるんだ?」
そう、理亜は一度もドアに触れてない。
触れればガチャガチャと音がした筈だ。
「それに、玄関にはチェーンをかけておいたのに、どうやって中に……」
「…………」
数秒の沈黙。
その直後。
『あはははははははははははははは??』
胸ポケットとズボンのポケットに入れていたDフォンと、ドアの前にいる存在から笑い声が同時に発生した。
(なんて奴だ)
こいつは、俺の従姉妹のフリをしたんだ。
それも、完璧な声音で、性格までそっくりに!
チャララララーン♪
ドアから離れた俺の、Dフォンではない普通の携帯電話に着信が入った?
「この曲……詩穂先輩?」
俺はポケットから携帯を取り出した。
表示は先輩だが……。
「もしもし?」
その電話に出た俺はいつもより明らかに沈んだ声を出していたことだろう。
「わっ、モンジ君、どうしたの??」
とても心配してるのが、電話越しに伝わってくる。
「いえ……今、ちょっと怖い目に遭っていまして」
「そうなんだ?えーと……」
そんな事を言われても先輩が困ってしまうだけだろう。
だが、俺はあえて先輩にそう伝えた。
だって……。
「だから、先輩も……本当は先輩じゃな
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