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101番目の舶ィ語
第五話。月隠のメリーズ・ドール
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囚われの竜の巣。
死と復活。
オランダの魔獣『ジェーヴォーダン』
鬼の一味、閻との激闘。
極東戦役の終了。
日本への帰国。
武偵戦友会。
コンビニでのアルバイト。
戦略爆撃機『富嶽』への浸入。
鬼の一味、閻との死闘。
そして……敗北。

自分の人生をあらためて振り返ってみると、既にとんでもない体験をしてるな……俺よ。
前世が前世だっただけに自身が今置かれている状況でもわりと冷静に対処できる。

「……騒いだって仕方ねえしな」

普通の人なら恐怖で声や体が震えたりしてしまうかもしれないがそんなことにはならない。
今の状況でただ怖がっていても何も進まない。
なら……進めるだけ進んでから絶望してやろう。
そう心に決めた時だった。

カシャン……ガチャ。

家の玄関の方から、鍵の外れる音と、ドアを開ける音がした。

「ありえん」

ありえない。
ドアが開くなんてありえないんだ。
何故なら玄関には鍵とチェーンをかけたからな。
しかし……常識が通じない存在なのに何でわざわざ鍵を外すんだ?
ドアを通り抜けるなり、ぶち壊すなりすることも余裕でできそはずだ。
それなのに、わざわざ『鍵を外す音を聞かせる』というのは……つまり、俺を怖がらせるという悪意によるものだろうか。
彼女は俺を動揺させて、怖がらせて、怖がらせて、徹底的に怖がらせて、それから命を奪う……そういうつもりなのか。
だが、何故?
その対象が元々の人形の持ち主だったら、理解できる。
捨てられた人形が持ち主を恨んでしまうのは、解らなくもない事情だ。
その復讐心が、相手に後悔を徹底的に与える方向性を選ぶからだ、とな。
だけど俺は前世も含め、人形を捨てたこともなければ、持っていたこともない。
なのに何故、これほど恨まれなければならないんだ?
それとも。
それとも、もう彼女にとっては『復讐』は二の次で、誰でもいいから、恐怖を与えて殺す。そういう存在になってしまっている、ということなんだろうか?
それはなんと言うか……

「助けてやりたい、よな」

もう殺す相手がいないのに、復讐を続けなければいけない人形。
そんな理由があるとしたら……。

ヒステリアモードがまだ続いてるせいか、そんな事を思ってしまっている。

ピピピピピッ。

きし……きし……

電話の着信音と、板張りの階段を上ってくる音が聞こえる。
それはワザとゆっくりと歩くことで、やはり俺の恐怖心を昂らせているように思えた。
携帯の方からは声は聞こえない。

……もう、俺との距離は目と鼻の先だから、わざわざ話さないのだろうか。

きし……

その足音が俺の部屋の前で止まった。
心臓の鼓動が煩いくらいに鳴り響いているが、これが恐怖からきた鼓動
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