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雨宿り
第七章
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 ここで迂闊なことはできないと思いながら今はただ太宰の本を一冊引き抜いた。その時ふと彼女の目が彼にいったのに気付いた。
(見てるな)
 それはわかった。しかしであった。
 今は何も言わない。知らないふりをする。そうしてその場を後にしてカウンターに向かい本を買うのだった。今はただそれだけだった。
 このことも学校で紅に話した。紅は今は学校の食堂でうどんを食べていた。加藤はそばでお互いそれぞれ違うものを食べながら話をしていた。
「へえ、そんな感じか」
「どうだ?」
「まあいいんじゃないのか?」
 紅は話を聞いて述べた。
「最初はそんなものだな」
「最初はか」
「少なくともこっちのことは見たんだな」
「ああ」
 それは間違いなかった。はっきり感じている。
「それは間違いないな」
「それだったらいいな。しかも悪い印象じゃないしな」
「それも大事か」
「第一印象は何でもかんでも大事だろ?」
「そうだな。それじゃあ」
「まずはそんなものだ」
 加藤に話したうえでこう告げるのだった。
「最初はな。それでいい」
「で、話はこれからか」
「まずはジャブが終わったところだな」
 紅はここでボクシングに例えた。
「まずはそれはいい感じでいった」
「次はストレートか」
「そういうことだな。それでどうするんだ?」
 あらためて加藤に対して問う。問いながらうどんをずるずると吸っている。彼は天麩羅うどん、それに親子丼も横にある。対する加藤は鴨なんばそばに天丼だ。麺と丼がそれぞれ逆になっている。しかし二人はそのことは特に自覚することなく食べながら話をしている。
「これからは」
「また本屋に行くか」
 加藤はそのそばを食べながら述べた。

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