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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴486年(中篇) 〜
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。となるとかなり以前から目を付けていた可能性が有る。

いや、目を付けていたと見るべきだ。ケスラー、ミッターマイヤー、ロイエンタール、ミュラーもそうだ。ミッターマイヤー、ロイエンタールはコルプト大尉の件でヴァレンシュタインと繋がりを持った。だがそれ以前からヴァレンシュタインは二人に関心を持っていた、コルプト大尉の一件はあの男にとっては渡りに船だった、そう考えるべきだ。

「うーむ」
「閣下?」
ヘルトリングが声をかけてきたが睨みつけて黙らせた。ヴァレンシュタインはかなり前からある男達を選抜していた。能力が有り貴族階級出身ではなく現状に満足していない男達、このままでは軍主流を歩めない男達……。ヘルトリングを見た、怯えた様な表情をしている。この馬鹿が! 訳も分からずに怯えた様な表情をするな、それとも私の危惧を察知して怯えているのか?

「ヘルトリング情報部長、卿はこの件を如何思うか?」
「好意的に考えればヴァレンシュタイン中将は実力のある人材を活用しようとしている、そう考えられますが……」
恐る恐ると言った感じでヘルトリングがこちらを窺っている。何が“が”だ、思った事をはっきりと言え!

「好意的に考えなければ如何なる?」
「閥を作ろうとしている、そう受け取れます」
「なるほどな、閥か。閥を作ろうとするなら目的が有る筈だ。その閥は何を目的とした閥だ?」
ヘルトリング、卿はただの権勢欲からヴァレンシュタインが閥を作ろうとしている、そう思っているのか?

「先日のベーネミュンデ侯爵夫人の事件が引き金になっている、そう考えますと……」
「……」
一々私の顔色を窺うな! 鬱陶しい!
「ミューゼル大将を抑えにかかった。或いは彼ら九人の働き次第ではミューゼル大将の排除にかかった、そういう事では有りますまいか」
「……」
全く見えていないわけではないか。

「年が明ければミューゼル大将はローエングラム伯爵家を継承する事になります。もし次の戦いで大きな武勲を挙げれば彼の影響力は一層強まるでしょう。それを避けようとしているのだと思います」
「まあそんなところか」

ヘルトリングが嬉しそうな表情をした。阿呆! そんなところと言うのはお前への評価だ。見えているようで見えていない、点数を付ければ五十点は超えるが八十点には届かない、そんなところだ。もどかしいにも程が有る、消化不良を起こしそうな男だ。全く、腹が立つ!

「ミューゼル大将に動きは」
「有りません。出兵の準備に余念がないようです」
「ヴァレンシュタインの動きに何も気付いてはいないのだな?」
「はい」
ミューゼルはヘルトリング以上に周囲が見えていない。或いは武勲を挙げて昇進すれば何とかなる、そう思っているのか……。二人に引き続きヴァレンシュタインとミューゼル、そし
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