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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶 〜 帝国歴486年(中篇) 〜
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の二個艦隊編成の責任者がヴァレンシュタイン中将です」
「……」
「新艦隊を編成するにあたって九人の少将が宇宙艦隊司令部に呼ばれました。集めたのはヴァレンシュタイン中将、彼らは新編成二個艦隊の中核を占める男達です」
二個艦隊、九人の少将か、まさかとは思うが……。
「如何いう男達だ?」
私が問い掛けるとヘルトリングが“シュミードリン少佐”と声をかけた。少佐がブリーフケースから書類を取り出す。それを受け取りながら“要点を言え”と促した。最近の若い奴は紙さえ出せば良いと考えている。そして“お読みになりませんでしたか?”等と言うのだ、阿呆共が。書類には重要な部分とそうではない部分が有る。重要な部分は口頭でも報告するのが常識だろう! シュミードリン少佐が口を開いた。
「個々の名前、経歴は資料をご確認ください。幾つか気になった点が有ります。その九人ですが何れも下級貴族、平民階級の出身です。そして年齢は二十代から三十代」
「二十代から三十代? 若いな」
「はい」
二十代から三十代、下級貴族、平民階級出身、少将……、あの男が選んだという事は貴族の後ろ盾など有るまい。若いが武勲を上げて昇進したという事か、間違いなく能力は有る筈だ。
「何れも実戦指揮官、或いは参謀として高く評価されている将官達です。但し、その評価の割に恵まれた立場にいるとは言えません」
「うむ」
不遇を囲っている、やはり有力者の後ろ盾は無い。実力の有る男達なら現状に不満を持っている筈だ。そこにあの男が手を伸ばした。
「四人で一個艦隊を編成します。一人が司令官、もう一人が副司令官、残り二人が分艦隊司令官です」
「八人で二個艦隊か……、待て少佐、集められたのは九人だったな」
確認するとシュミードリン少佐が頷いた。
「はい、残りの一人、メックリンガー少将は総司令部に作戦参謀として迎えられます」
メックリンガーか、資料を確認した。“幅広い戦略眼を持ち参謀として得難い資質も持っている”、そんな評価が書かれていた。
「その九人とヴァレンシュタインの関係は?」
ヘルトリングとシュミードリンが視線を交わした。少し間をおいてヘルトリングが話し始めた。こいつが部下を連れて来るのは部下で私の反応を確認しているのかもしれない。私が関心を示せば自分が話す、そうでなければ部下に任せる、或いは言い辛い事は部下に言わせる、そんな気がした。姑息では有るが隠し事をするよりはましだろう。用心深いと評価する事も出来る、好意は持てないが。
「九人の内三人が何らかの関わりが有ります。メックリンガー少将、クレメンツ少将、ワーレン少将です。しかし残りの六人には接点は有りません」
「……」
接点は無い、つまり選んだというわけだ。あの事件から三週間、しかし新規に二個艦隊を編成すると決めたのは最近だ
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