首無き麒麟は黒と出会い
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らも自嘲気味に喉を鳴らすのだろう、と。
想いは同じであれど、先に描くモノは以上であれど、やり方は同じであれど、覇王は彼とは違うのだ……それでも、彼が望んだ平穏は作れるだろう。
不満は無い。無いのだが……彼らは寂しく感じていた。自分達の主は、やはり彼だけだった。
幾分、彼らは華琳に練兵場にて待機せよ、との命を受けてそこに向かい始め、劉協と華琳は城の内に歩み入る。
――黒麒麟の身体……あなた達の心に渦巻く澱み、此処を発つ前に少しだけ深く染めておきましょう。“戻らない”場合の為にも。
帝の隣に侍りながら、華琳は昨日の夜遅くに到着した“二人”の事を頭に浮かべて……また、笑みを深めた。
†
相対するは二人の少女。其処には重苦しい立場もなく、ただの人しかいなかった。
「ゆ……月……?」
劉協は忘れるはずもない。その少女は己の命と心の恩人。
昏くて恐ろしい政略の泥沼に飛び込み、内から変えようと尽力してくれたたった一人の味方。
死んだと聞かされていた。自分も死んだと思っていた。なのに……この目の前に居る彼女は生きている。
白銀の髪は美しく、儚げな雰囲気に穏やかさを漂わせ、優しく芯の強い瞳には意思の輝き。
「はい、陛下」
上品な仕草も微笑みも声も……記憶にあるまま。全てが彼女である証明。
華琳に連れられて訪れた部屋で、劉協は月との再会を果たした。
涙が零れそうになるも、唇を噛んでグッと堪えた。それでも……止まらなかった。たった一人だけの理解者だったのだから詮無きこと。
「……ばかものっ……余の許可なく離れおって……」
侍女服姿の彼女の袖を、つい……と摘まむ。ただそれだけだが、少女としての劉協を示すには十分。
責めているのではない。そういう言い方をしなければならないだけ。自分が不意を突かれて連れ去られた以上は、である。
月はきゅっと彼女の小さな掌を包み込んだ。
「申し訳ありません」
「よい……よい、許す……そなたは生きておる。それが……何よりであろう」
震える唇、その横には涙が一粒。月は小さな手拭いでそっと劉協の頬を乾かした。
月の目尻にも涙が少し。昔の月が救いたいと願った目の前の小さな皇帝は、どれだけのモノを諦観してきたか知っているから。
嘗て王として魔窟に乗り込んだ英雄董卓はもういない。この世界に認識されているのは悪辣なる逆臣董卓。そして此処にいるのは……ただの月。姓も名も捨て去った、ただ一人の少女。
互いに幾分か想いの確認をし合っていたが、劉協は説明を求めた。
何故生きているのか。
今までどうしていたのか。
華琳の所に居たのなら、何故会おうともしなかったのか。
沢山の疑問をぶつけ
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