首無き麒麟は黒と出会い
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を征伐せよと勅を下せばすぐにでも駆けつけるだろう。
ただ、袁家と孫呉討伐までの同盟に繋がり、益州勢力とも後々手を繋ぐ事に発展し兼ねない。
優しい方法で乱世を“止められる”が、後の世に長い平穏が来るかと言えば……華琳の判断では否、そして為したい事でもない。
――孫策は私の予想通りにするでしょう。せっかく取り戻した大切な土地を、また奪われたくなどないのだから。
自分と同じく、雪蓮も未来の大陸の姿を承知の上だと……孫呉の王が持つ先見と才を見極めた上で降した決断。
誰彼の目的や為し得んとしている事を読み解いて行けば、旧き龍の齎した波紋は大きく、華琳すら彼女の思惑に少しだけ乗らざるを得なかった。なればこそ、こうするのが最善だと、華琳は早い時期に決めていた。
――しかし……この孫策に与える罰こそが今後の為の大きな成果となり得る。
静かに昏く、乱世の様相はあの龍に引き摺り込まれたが故、裏切りと牽制の泥沼になる可能性が出てきた。そのただ中で、覇王だけは己が有利を確信して笑みを深める。
「陛下」
凛……と、鈴の音の如き声が向けられる。彼らに他にも何か話そうかと思案していた劉協の耳に。
ゆっくりと顔を向けた彼女は、華琳の瞳の鋭さに僅かに圧された。
されども、今は帝の仮面の上、目を細め、続けよと示す。
「現在行われている官渡の戦に於いて、袁紹と袁術――袁家に対する処断は……詮議を執り行わず、この曹孟徳に一任して頂きたく」
アイスブルーの瞳には知性の輝き。笑みはただ不敵にして敵意無く、何を思ってかは劉協には分かりかねる。
「逆臣に対して正式な詮議をせずに処断する、と?」
袁紹や袁術ほど名の売れたモノであるのなら、武官文官を並べて罪一等を言い渡し、帝に示した上で刑に処されるのがしきたり。帝が袁家の対応を任せると言ったとしても、殺さずに捕えられたのならそうするべきである。
華琳としてはそれをしたくない理由があるのだが……じっと帝の瞳を見据え、
「はい」
短く返答を行うだけであった。
これは試されているのだろう……劉協はそう読み取る。どう取るにしても抗うことなど出来ないが。
「何か……考えがあるのじゃな?」
「然り。必ずや……」
区切られた一拍。徐々に引き裂かれる口と、楽しげに細められた目に怖気が走った。
「……世の平穏の為になりましょう」
ゆっくりと目を瞑る劉協は震えていた。目の前の女が恐ろしい。何を考えているか分からないというのは、人として恐怖を感じて当たり前。
しばらくの静寂。
膝を付く彼らは華琳の笑みに彼とは違う英傑の力強さを感じ、目を伏せる。
瞳の奥に光る輝きは獰猛に過ぎる。彼なら、昏く渦巻く自責の念を込めて、楽しげに見せなが
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