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DAO:ゾーネンリヒト・レギオン〜神々の狂宴〜
第十九話
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が兄に、この誓いを捧げます』」

 瞬間。

 シノンの体は、まるで凍り付いたかのように動かなくなった。

 足が。

 腰が。

 腕が。

 首が。

 口が。

 目が。

 全く、動かない。呼吸すらできない。

「『私の存在(からだ)は、あなたの心を埋めるために創られ
  また私の心は、あなたの傷を癒すためだけに存在する。
  されば、私は其を是とし、私の欲望と、愛と、憤激の、あらゆるすべてを以てして、
  あなたの空虚な罪を埋めよう。
  私の(ココロ)を―――お兄様に、捧げます』」

 何かが。

 この世界を終焉へと導くだろう何かが、あの金髪の少女の中から顕現しようとしていた。

 だがそれは、発動一歩手前で、何者かにとどめられる。

 しかし、その終止は――――新たな絶望の、切り口でしかなかった。

『やめなさい、シャル。お兄様(マスター)はそれを許していません』

 GGOの黄昏色の空が割れ、何者かが()()てくる

 それは、半透明の、虹色に輝く、ALOの妖精たちの持つそれによく似た形状の《翅》を持つ、二十歳ほどの女性の姿をしていた。純白のローブに身を包み、先端にいくにつれて()()色になっていく、髪の毛をミディアムカットにした、やはり()()い瞳の、どこか将官じみた雰囲気を持つ女性だった。

「トリス……! あなた、アップデートが……」
「先ほど終了しました。現時点を持って、私の管理者権限はワンランク上へ増加。この戦場の統率権限は私に移行します。シャルルフォンシャルロッテ・イクス・アギオンス・サーティシックス及びサクリファイス・イクス・アギオンス・サーティセブンに、お兄様から帰還命令が届いています。瞬時にこの空間を抹消、《白亜宮》へと帰還しますよ」
「くっ……その役割も、結局あなたが担うってわけ?」

 悔しそうに、シャルルフォンシャルロッテが、トリス、と呼ばれた女性をにらむ。するとトリスは恍惚の表情を浮かべて、

「当たり前です。ああ、お兄様(マスター)お兄様(マスター)……あの御方からいただいた新しい力です。どうして振るわないでいられるでしょう。あの御方もそれを望んでいられる。故に、私が――――トリスアギオン・イクス・アギオンス・ゼロオメガが、この空間を終結させます」

 そう言って。

 空中に浮かびながら、トリスアギオンは、鷹揚に両手を広げた。

「『十九八七六五四三二一〇
  いと尊き我が兄に、この誓いを捧げます

  その昔、あらゆる木の実を食いし人は、
  さらなる実を求め、楽園を追われた
 
  その昔、荒野の大地の主たちは、
  命と引き換えに食糧を得た。


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