第十章
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た」
このことも彼に話した。
「それな。買ったよ」
「そうか。こころか」
「それでよかったか?」
「まあいいんじゃないのか?」
紅は今度は首を少し捻ってから加藤に対して答えた。
「それでな」
「そうか。いいか」
「それでいい。まあそれでな」
あまり何と言っていいのかわからないがそれでもある程度はいいだろうといった感じの返答だった。
「いいと思うな」
「あまりはっきりしない返事だな」
このことは加藤も気付くことだった。彼もそこを指摘する。
「何でなんだ?また」
「こころはな。結構うじうじした作品だからな」
だからだというのである。
「それ買ったのはな。ちょっとな、とも思うんだよ」
「漱石の作品で読んでないのはそれだけだったんだよ」
加藤もだからだというのである。
「それでこころにしたんだよ」
「それならそれでいいけれどな」
「漱石もあれで結構うじうじしてる作品だからな」
「我輩は猫であるとか坊ちゃん以外はそうだな」
紅も知っていることであった。
「そう言ってしまえばそうだな」
「どっちも読んでたからな」
加藤もここで首を少し捻ってみせる。
「だからな。それで」
「それならそれでいいか」
結局そういうことにした紅だった。
「やっぱりな」
「わかった。そういうことだな」
「ああ。それでだ」
彼はまた加藤に言ってきた。
「とりあえずはいい流れだな」
「そうだな。それはな」
「後はこの流れを維持してだ」
こう話すのだった。
「それでこのまま進展させるんだ」
「このままか」
「流れはいい」
このことを強調して話す。
「流れはな」
「流れか」
「流れがないとどうにもならないものなんだよ」
紅はさらにはっきりと言い切ってきせた。
「何でもな。特にこうした恋の話はな」
「そういうものか」
「そうさ。俺もここまで流れがいくとは思わなかった」
「予想以上か」
「ああ、その通りだ」
そのことを隠すこともなかった。
「いいな。このままいけよ」
「わかった。それにしてもあれだな」
加藤は紅の言葉に頷いてからまた述べてきた。彼にしても考えている顔である。
「最近天気がいいな」
「天気か?」
「最近まで随分と雨ばかりだっただろ」
今の季節のことを考えながらの言葉だった。そもそも加藤が彼女のことを知ったのも雨のせいだった。ふと窓の外の青い世界も見た。
「それでも今はな」
「そうだな。晴れが続くな」
紅もそのことに言われて気付いた。
「最近な。結構以上にな」
「天気予報は何てなってたかな」
「晴れが続いたんじゃないのか?」
紅は今はそこまではチェックしていなかった。とりあえず携帯を取り出して見てみた。その結果は。
「ああ、晴れ
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