第八章
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いるよ」
「フランツ=ヨーゼフ帝が」
「薔薇の騎士の初演の時の皇帝がね」
丁度第一次世界大戦直前が薔薇の騎士の初演の時である。フランツ=ヨーゼフ帝は第一次世界大戦中にこの世を去っている。せめて彼が戦勝終結まで生きていればオーストリア=ハンガリー帝国、そしてハプスブルク家の崩壊はなかっただろうと言われている。彼はそこまで偉大な象徴となっていたからだ。
「演じる頃は」
「偉大な女帝の頃」
ハプスブルク家での女帝と言えばマリア=テレジアを指す。十六人の子の母でありよき妻でありそれと共に英邁で活力溢れる君主であった。オーストリアを建て直し国を守り抜いた偉大な女帝である。フランス革命の悲劇の王妃マリー=アントワネットの母としても有名である。
「その二人が君を見守っているんだ」
「だから安心していいのね」
「今度の舞台は必ず歴史に残るものになる」
奇しくもアンドレアスは大沢と同じことを言った。
「絶対にね」
「それは私の力だというのね」
「そうさ」
彼は迷わずにハンナに告げた。
「君がいるからこそ。絶対にね」
「薔薇の騎士はマルシャリンの存在が大きいわね」
「勿論」
薔薇の騎士の主役はソプラノ二人とメゾソプラノ一人である。その中でもソプラノの一人である元帥夫人の存在が非常に大きいのである。そうした意味でこの作品は完全なプリマ=ドンナオペラであるのだ。
「君がいるから。僕は安心してこの舞台に向かえる」
「私のマルシャリンだからこそ」
「当然僕も今まで以上の舞台を見せる」
彼にも自信があった。やはり当代きってのドイツ系バスとしての自負があるのだ。
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