第六章
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かに味わっていた。だがそれは向かい側にアンドレアスが来たことで終わったのであった。
「あなたもまだだったの」
「待っていたんだ」
彼は静かな笑みを浮かべて妻に答えた。
「君が帰って来るのをね」
「有り難う。けれど」
ヒルデガントのことはあえて言わずに夫に問うた。
「帰って来なかったらどうするつもりだったの?」
「その時はその時さ」
その静かな笑みでこう答えるのであった。
「最後まで待って劇場に行く途中で食べるつもりだったよ」
「そうだったの」
「けれど。これで二人で食べられたね」
「そうね」
夫の言葉に対して静かに笑う。穏やかだがそれと共に寂しさも漂う笑みであった。
「もう子供達は行っているわよね」
「もうね。家に残っているのは」
後は二人と使用人達だけである。だがそれで決して寂しくはないのであった。
「家族では私達だけ」
「皆がいるけれどね」
「だから。寂しく思う必要はないのね」
「寂しい朝は。この世で一番辛いものだよ」
アンドレアスはその穏やかな笑みと共にこう述べた。
「この世で一番ね」
「そうかもね。けれど私はあなたにいつもそれを与えてきたわ」
辛い顔で告げる。
「そのこの世で最も辛いものを」
「僕は別にそうは思ってはいないよ」
だが彼は妻に対してこう言葉を返した。
「自分がそう思っていない限りはそうはならないものさ」
「そうなの」
「そうさ。けれど君は違う」
ハンナを見て述べる。
「この頃。ずっと辛い気持ちでいるようだけれど」
「知っているのね」
ハンナはクロワッサンを口に入れた後で答えた。アンドレアスはスクランブルエッグを口にしている。その中で話をしていた。
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