第十四章
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の言葉に頷く。
「魔力なのでしょう。オクタヴィアンを女性だと思えるのは」
「実際に彼は女性ではないのですか?」
彼を女性と呼ぶ。不思議な言葉になっていた。
「やはり。ですから貴女もまた」
「そうなのですか」
ここで彼女も気付いた。
「そうだからこそ私はオクタヴィアンを女性だと」
「彼女は女装します」
遂にオクタヴィアンを『彼女』と呼んだマゾーラであった。
「それは彼女の本来の姿に戻ったということなのでしょう」
「だからこそ私はオクタヴィアンの心がわかる」
「そうなります」
そう彼女に告げた。
「そして私もまた」
「私達もまた。同じになっているのですね」
ヒルデガントは今それを感じたのであった。
「やはり。そうだからこそ」
「お互い今こうしてここにいる」
「私も。貴女と共にいたくなりました」
ヒルデガントはまた言うのだった。
「オクタヴィアンとゾフィーのように」
「舞台だけではなく」
「そう。私がオクタヴィアンなら」
「私はゾフィー」
もう二人はヒルデガントでありオクタヴィアンになっていてゾフィーでありマゾーラになっていた。そうした二人になっていたのだった。そうした意味での二人であった。
「そうして二人で」
「ずっと」
二人はそれぞれそっと手を出し合いそれが触れ合った。そうして今二人になったのだった。
舞台がはじまった。それは前評判はスキャンダラスであったが実際の舞台は。初演前にはまだ様々な雑音が聞こえていた。
「やはり前評判はかなりスキャンダラスだな」
「気にしてはいないよ」
大沢はそうバジーニに答える。今二人は初演前日に最後の打ち合わせを終えて大沢の家で楽しく飲んでいた。赤いワインに様々なチーズがある。シンプルだがそれだけに中々味わいのある組み合わせである。ワインとチーズは神が考えた最高の組み合わせの一つである。
「そんなものはね」
「そうか。やはりな」
「むしろそっちの方がいい」
大胆にもこう述べるのであった。
「最初悪評の方が実際の舞台は映えるものさ」
「それは日本的演出かな」
バジーニはワインを飲みながら楽しそうに問うた。これは冗談と演出家としての興味の二つがミックスされた言葉であった。
「あえてよいものを悪いものの次に出すというのは」
「いいや」
しかし大沢はそれは否定した。そうしてモツァレラチーズを一口食べるのだった。その独特の弾力が歯に伝わり絶妙な感じである。味が極めて淡白なのもいい。
「僕の考えさ」
「そうなのか」
「日本的演出だと薔薇の騎士はどうなるかな」
そのうえで不意にこう言うのであった。
「少し考えてみたいな」
「そうだね。それも面白いかも知れない」
バジーニもそれに乗ってきた。言われてみればそれも案外面
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