第十三章
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。自分に対しての優しい顔も思い出すのだった。
「それでも。私には」
「そういうことです。人は皆同じなのです」
「同じですか」
「そうです」
そこでまた言うのだった。
「人には誰もが清らかな顔と醜い顔があります」
「二つの顔が」
「貴女のお父上は確かに人として許されぬ罪を犯しました」
それは事実だ。彼女も否定できない。
「ですが。それと共に優しいお父上でした」
「その二つで相殺されると仰りたいのですか?それは」
「いえ、そうは申しません」
ヒルデガントはそれは否定した。
「それは貴女も同じだということです」
「私も、ですか」
「そうです。貴女が忌み嫌うそのお父上の血が醜いものとするならば」
あえてそれを出してから。また言う。
「貴女が本来持たれているその純粋な性格、それは清らかなものです」
「それをどうされるのですか?」
「私はそれを愛します」
彼女は言った。
「私をですか」
「そう、貴女の本来持たれているものを。それを愛するのです」
「私にそんなものは」
「御自身では気付かれないものです」
また穏やかな声で彼女に述べるのであった。
「清らかなものには。醜いものには気付いても」
「そうなのでしょうか」
「自分では中々わかりません。しかし他人から見れば違います」
「では私は」
「貴女のお父上のことはわかりました」
それも受け止めるのであった。本来は彼女のものではないと思いつつも彼女のものとして。彼女がそれを望んでいるのであるから。
「ですがそれもまた受け取らせて頂けませんか」
「それもですか」
「そうです」
それもまた受け止めると言うのだった。
「是非共」
「それでも。宜しいのですね」
「ええ」
また頷く。
「私は。そうして貴女と共にいたいのです」
「本当に私で」
また同じことを言ったが今度のは先の言葉とは少し言葉のニュアンスが違っていた。それもまた意味があったのをヒルデガントは感じていた。
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