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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
河童の川流れ
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る壁を作ろうとしない、そんな懐の深さによるものではないかと」

つまり、妖怪同士ですら社会の一部ではない者を寄せ付けない天狗と、種族の枠を超えて絆を育もうとする河童では、当然後者の方が接触するには都合が良いということだ。

「ならば早速河童の下へ向かおうか。本当に友好的ならばいきなり押しかけても追い返されたりはしないだろう。元々自由な性質な妖怪ならば尚更な」

「そうですね、では―――確かこっちの筈です。川のほとりに居を構えているケースが殆どですので、川を目指せば自然と会えるでしょう」

早苗の案により、川を目指すことになる。
水の中で生活していると思っていたが、一応地上住まいがあるのか。
おかしな話だが、水の中で談話なんて無茶が起こることはなさそうだ。

「天狗さんと河童さんの領地は完全に独立しています。同じ社会の中で成り立っているとしても、互いに住める理想の環境が異なる以上当然ですけれど、更には相互干渉もそこまで行われていないらしいです。そのお陰でこういう抜け道を利用できるんですけど」

「その情報はどこから?情報漏洩なんて馬鹿な話はないとは思うが」

「それは諏訪子様のお力によるものです。曰く、大地を通して伝わる音の振動をキャッチしているとか。―――あ、見えてきましたよ」

何ともない風に語られたそれは、私にとってはとても重要な問題だった。
もしそれが本当ならば、今私達がしている会話も筒抜け―――ひいては私が発する言葉全てが諏訪子の耳に届いてしまうことを意味している。
その辺りのことを詳しく聞こうと口を開こうとしたが、代わりに視界に入った光景に息を呑むことになる。
木漏れ日から乱反射する川の水は、特別なものではない筈なのにひどく目を奪われる。
環境汚染が行われていない自然とは、かくも美しいものなのか。
初めて幻想郷を上から見渡した時以上の感動が、胸に去来した。

「あ、あれ―――」

感動に打ちひしがれていると、早苗が一点に指を指す。
それを目で追うと、それは上流に向けられていた。
そして、そこから流れてくるヒトガタに向けられていることも続いて理解した。
一瞬水死体かと思ったが、すぐにそれは否定される。いや、それよりも―――

「―――キュウリを食べているな」

「―――はい。仰向けで、凄く嬉しそうに」

流れてきたのは、笑顔でキュウリを食べている少女だった。
直感的に、あれが河童なのだと理解する。
同時に、私の中のイメージである河童が音を立てて崩れていく。
あれでは人間と何も変わらないではないか。大凡河童と呼べる要素が見あたらず、困惑するばかりだ。

―――ふと、河童少女と目が合う。
数秒の視線の交差。時間が止ま
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