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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
運命の紅
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白い陽射しが大地を照らしあげる。
朝靄が晴れ生命が活動を始める時間帯に、私は洗濯物を干していた。
太陽はいつだって主婦の味方で在り続けてくれる。いや、別に結婚していませんけど。
でも、主婦顔負けの家事能力は有している。なんとも言い難い気分である。
直ぐに一仕事終えた私は、疲労による溜め息をひとつ、身体をほぐすべく腕を回す。
三人暮らし―――その内二人とも人間ではないのだが―――で、家事全般はすべて私が賄っているため、やることが少なくても負担はそこそこできてしまう。
別段それに文句はない。寧ろ彼女達の奉仕ができる誉れを喜ぶべきなのだろう。
何せ………その同居人とは、神様なのだから。

私は東風谷早苗。
先程挙げた神様二人―――八坂神奈子と洩矢諏訪子の下で仕える、風祝という神職に就く者。
幼い頃から神に奉仕する運命を背負い、天寿を全うするその時まで、身も心も神と共に在ることを由とする。
与えられた人生。求められない人格。望まれない別の未来。
ただひとつの事柄のみに於いて存在意義が成立する。
そう、それはまるで機械ではないか。

それに気が付いたのは、恐らく小学生の頃。
それまでは、他人と違うということ、偶像としての広義な意味しか無い神≠フ存在を知る者としての優越感、特別な感情ばかりが前に出ていた。
良くも悪くも、純粋だったんだと思う時期。
切っ掛けは、よくある小学校で書かされる、将来の夢という題材の作文だった。
案の定内容は神職のことばかり。
子供心ながらに自分の立場が誇れるものであった私は、意気揚々と発表していたのでしょう。
ですが、自分以外の発表を聞いてみて、愕然とした。
誰もが平々凡々な職業を語り、その事実が自身を孤独へと追いやった。
別に同級生の態度が変わったとかそういうのではなく、特別と孤独は同義だと知ってしまった私が勝手に変わってしまったに過ぎない。
物語に出てくる王様とかも、こんな気持ちだったのかな。そんなことも考えたりもした。

家業を継ぐ、なんて生易しい事態ならよかった。
だけど、私のそれは常軌を逸している。人間の意思でどうにかできる問題ではない。
断れば神の怒りに触れることにもなりかねない事態に、私は苦悩して―――結果、私は心を殺した。
本音を決して表に出さず、仮面を被り、八方美人に生きる。それが処世術なんだと自分に言い聞かせた。
第三者から見れば子供らしくない子供だっただろう。そうあるべくして努力してきたし、違和感なんて最初だけ。いずれはできた子供という認識が定着し、疑問は誰も感じなくなる。
幸いにも、諏訪子様達も私の行動に疑問を持っている様子はない。神様二人を騙せているのなら、完璧といっていい筈。


「…
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