暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
秋風のコガネ色 その壱
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、彼女の疑問符に俺は返答した。

「ああ、そこに関しちゃあ理由はあるぜ。ちょいと聞いたところによると、崖沿いのどっかに≪人間の魔法使い≫がいるらしい」

 俺の言葉に彼女が怪訝そうな表情になる。その後、諦めたかのように、くいっと首を傾けて若干背の優まさっている俺の方に耳を突き出す。最早、慣れ親しんだとも言える彼女の『聞き』の態勢。それを横目で見ながら俺は言葉を続ける。

「つい最近、前線メンバーの誰かが遭遇したらしい。情報屋が言うには、髪から靴まで全身金色の肌白少女で、いかにもな装飾の杖を持った≪自称≫魔法少女のNPCだそうだ」
「うーん、SAOで魔法はないって聞いたんだけど。今までも魔法を使う敵すらいなかったじゃない」
「まぁ俺もそうだと思っていたが、多分そのNPCは例外だろう。俺もゲームデザイン的にそのNPCがプレイヤーに魔法を教えたり魔法で攻撃してくるとは全く思っていないさ」

 ザクザクと落ち葉を踏む音がテンポよく鳴る。足音、秋特有の風切り音、鳥の鳴き声を挟んだのち彼女が愚痴る。

「じゃあなんで会いに行くのよ。――ああ分かった。貴方、実は魔法少女趣味なのね。月に代わってお仕置きされたいんでしょ」
「はは、古典を出されると批判しづらいな。というか、そうじゃなくてさ。いや、魔法少女趣味じゃないぜ? 探す理由なんだが俺が思うにその魔法使いのNPCは≪キャンペーンクエスト≫の引き金なんじゃないかって踏んでいてさ」

 キャンペーンクエスト、何層にも跨って行われる連続クエストで、労力もかなり大きいのだがそれ以上にクリア報酬が莫大なのが特徴だ。失敗したら一からやり直しという鬼畜使用なのも許容できるほどに利益がある。

「本当にぃ? 珍しい女の子に会いたいからじゃないのぉ?」

 いつになく疑り深く、かつて無いほどのねちっこさの友人に『勘のいい奴め』と内心思う。生まれ持っての野次馬精神は、今なお健在なのだ。言い訳の言葉を選ぼうと思考を巡らすとしばしの間、環境音だけの静寂が生まれた。

――しまった、これでは言葉に詰まったみたいではないか!

「ち、違う違う! これは攻略のために必要なことなんだよ! キャンペーンクエを見逃してたら大損だろ!」
「えー、別に私達じゃなくても良くない? 一応攻略トップのトップなんだから」
「トップって君……」

 確かに、彼女の言う通り、現在俺は、現実の世界――俺は≪現世≫と呼んでいるが――で培った技術により攻略組のまとめ役を買って出ている。二十五層で≪軍≫のやらかしをカバーして以来、俺の名前が攻略組の中でもかなり目立ってしまったので、前線から身を引いた軍の代わりに俺がトップとして自然な形で躍り出たのだ。ついでに俺の相棒の名前も上がった。当人曰く、風評被害も甚だしいそうだ。

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