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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
08
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しているのか? 何故だ?」

「…………黙れ、絶対にころ」

 口を塞いで滑らした頭を元の位置に擦り戻す。感触がゴリゴリと硬い物の擦過に変わった。どうやら傷が骨まで届いたらしい。
 くぐもった男の絶叫に、蔵馬は言葉を重ねる。

「早く言えよ。これ以上人ん家の壁汚すな」

「わ、わかった……言う、俺らは斎藤美希を拉致るように言われたんだ」

「誰に?」

「親父にだよ!」

「親父……やっぱり暴力団かお前ら。それで、何人で来た? 人探しなら他にもいるだろ」

「若いの入れて八人だ……もういいだろ……早く放せ……」

「狙う理由までは聞かされてないよな。まあいい」

 蔵馬は髪から手を放し、襟の代紋を毟り取る。そして男の後頭部に膝蹴りを入れた。
 失神して崩れ落ちるヤクザをその場に残し、足早に立ち去る。
 そろそろ騒ぎを聞きつけた地元住人か、通報を受けた警察がやってくる。ここは警察署から徒歩数分の場所である。
 道を右往左往。数百メートル離れて、なんとか安全圏まで逃れた蔵馬は携帯を取り出す。
 カメラで奪った代紋を撮影し、その画像を添付したメールを常盤に送る。
 そしてメールに続いてダイヤル。

『蔵馬君か、今の画像は何だい?』

「ヤクザの代紋だ。どこのか分かるか?」

『ちょっと待ってね……大柳組だって。関西の暴力団扇組の直系だね』

「関西の? どんな連中だ?」

『詳しくは僕も知らないけれど、確か外国人の不法就労斡旋とかを主な資金源にしていたはずだよ』

「……そうか。分かった」

『どうしたんだい? 何かトラブルでも?』

「いや、大丈夫だ。助かった」

 通話を切り、続いてモモの番号にかける。

『もしもし』

 電話に出たモモの声は、荒い息が混ざっている。聞こえる音も何やら騒がしい。どうやら走りながら話しているらしい。

「モモ、今どこだ? 何してる?」

『えっとですね、何と言えばいいのやら』

「どういうことだ。状況を説明しろ。短く的確にだ」

『短く的確……斎藤美希を見つけました。そして』

 そして、

『怖いおじさんたちに追われています』

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