赤は先を賭し、黒は過去を賭ける
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軍師は喜ぶべきですっ」
わたわたと手を振る彼女は少女のよう。みるみる内に顔が赤くなるが、戦場である為か鼻血は噴き出さない。
面白くて笑い出しそうになるも、秋蘭はどうにか抑えた。
「そうか、ならその時の反応も楽しみにしておくよ」
意地の悪い言い方だ、と稟はジト目で睨む。そうしてコホン、と咳払いをまた一つ。
「……では私は、あなたはやはり素晴らしい将です、と言っておきますよ、秋蘭」
「勝利した時にもう一度言って貰おうか」
二人はくつくつと笑い合った。
与えられた仕事を遣り切った高揚感からか、皆の表情も安堵に包まれる。
されども彼女達は曹操軍。気を抜かずに警戒を怠らない。
まだ、この戦場は終わらず、敵を打ち倒してもいないのだから。
†
其処には阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。
西門の城門は破壊され、敵兵は蜜に群がる蟻の如く大量に押し寄せているのだ。袁紹軍の猛烈な攻勢、と付近だけを見れば誰もが言うだろう。
しかし……曹操軍の優位は変わらない。
こちらのバリスタも既に破壊済み。本来、バリスタは支援兵器としての用途が大きい。しかしこの世界では新しい為に、主力としての扱いを持たせてしまったのが悪かった。
東と同じく梯子も既に壊れている。なのに何故、兵が城壁に群がっているのか……それは一つの策が成った証であった。
「“しょっとがん”、とお兄さんは言ってましたか」
のんびりと紡いだ言葉はいつも通り。とはいえ、内心でその兵器の威力に風の手は震えていた。
群がる敵兵とは相反して、朔夜が蜘蛛の巣と呼んだ杭の網目の中ごろでは、敵兵の多数が倒れ伏している。
呻くモノ、泣き叫ぶモノ、もがくモノ、這ってでも逃げようとするモノ……全ての兵の身体にはある物が突き刺さっている。
「うっわぁ……やっぱこうなるんやなぁ」
真桜の落ち込みは悲哀から。絡繰りとは結果を求めて生み出すモノであり、彼女は誰よりもそれをどういった用途の為に作り出したかを理解していた。
落ち込むなと言い聞かせて、くるくると指で笛の紐を回し始める。この兵器の指示にはこれを使おうと、秋斗が決めていたのだ。
この兵器は、黒麒麟の嘶きを以って放たれるに相応しい……と。
「嘗ての部隊、その最終手段である捨て奸から思い付いたらしいですがー……ただの竹が此処まで強いとは思わなかったのですよ。よく思いつきましたね」
「投石器の頭部分だけ改良して沢山の槍投げれるようにしよう、なんて兄やんが言うんやもん。作ってみたら……えげつない兵器になりよったわ」
街で兵器開発の案を練っていた時を思い出して、真桜は苦笑を零す。
放たれたのは竹槍であった。それも、重心がブレないようにと、先端に土
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