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乱世の確率事象改変
赤は先を賭し、黒は過去を賭ける
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首を傾げたが……」
「曖昧ですが実例は古くから立証されてますよ。ねずみの死骸や糞もそうですし、戦後の近辺には疫病が多く見られています。目に見えずとも原因を知っているというのはそれだけ対処が出来るという事。彼が華琳様の街改革で衛生面の強化に重点を置いた本当の理由はそれでしょう」

 風に示した事案の本当の価値は其処にあった。
 彼の知識は異質に過ぎるが、彼女達のような智者が読み解けば理屈が通るモノが多く、信頼するに足る。

「む……“ばりすた”の破壊が出来たか」

 バキバキと木が割れる音が響き、見れば敵兵器は大きな石に潰されて壊れていた。
 兵達から歓声が上がる。こちらの兵器の有用性を確認出来たなら、それは何よりも心を沸かせるモノであるが故。

「……これは嬉しい誤算ですね」
「一発で壊せたのは僥倖だろう。投石器は大型になるほど精度が落ちる。さて……この後はどうする?」
「予定通りです。こちらには兵器がある分、通常よりも優勢に事を運べる。それでも無様に攻め続けるなら……っと、撤退の銅鑼が鳴りましたね」

 話の途中で、目の前の袁紹軍は撤退を選択し、矢に射かけられながらも下がって行った。無論、小型と大型投石器からの攻撃も止んでいない。
 ほっと安堵を一息。

「まあ、梯子も無し、城門だけに希望を持って攻め続けるわけが無いだろうな。稟はどう来ると見る?」
「三面全て押し返せばしばらくは睨み合いが続くかと。真桜達が掘った分の土嚢を積み上げて夜まで持たせます。城門の予備は作ってありますから、後は組み上げて据えるだけです」
「くくっ、敵も一日で城門が復活するとは思うまい」

 楽しそうな秋蘭に対して、稟は呆れのため息を吐く。

「……あの人は悪戯が好きなせいなのか、人の嫌がる事、苦しむ事、悩む事をよく理解してますよ。嫌がらせを全て策に転じてくるあたり、発想は軍師のそれと言っても過言ではありません。強いと思った兵器が全く効かない場合も、延々と同じ事をさせられるのも……心を折るには最適解です」
「そうやって思考誘導を仕掛けた先には、華琳様の愛する軍師達があいつが考える嫌がらせをより強力にした罠を張っているのだから、心底恐ろしいと思うよ」

 秋蘭が称賛と共に笑い掛ければ、稟は照れて言葉に詰まる。
 頬が僅かに赤い。咳払いを二回して、クイ、とメガネを指で押し上げた。

「……褒めるのはまだ早いのでは? 軍師が求めるモノは結果ありき。予想予測の段階だけでは、策に嵌めたとは言えません。此処で褒めるべきなのは秋斗殿や朔夜、詠と月や真桜等の事前準備を行っていた面々です」
「素直に喜べばいいモノを……」
「もし……か、華琳様があいっ、愛してくれていると言っても、これだけでは満足など出来ませんから……勝利した時にこそ、我ら
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