赤は先を賭し、黒は過去を賭ける
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と止まったのなら矢や石の的にも出来る。
柵にすれば敵は壊そうと躍起になるだろう。壊してから近付こうとするだろう。それでは意味が無い。ただそこにある杭だからこそ、思考誘導が為せるのだ。
「ふっ、城門が焼切れるまで待てばよかったモノを」
「それは仕方ありませんよ。焼切れる前に脆くなった城門を“ばりすた”で破壊し即時突入、通常の攻城戦も織り交ぜて多数に手を割かせる……私でもそういう絵図を描きます」
浮足立つ敵兵には矢の雨が降り注ぐ。城壁の外側は混乱に支配されていた。
梯子が無ければ敵は矢を打つくらいしか手が無い。それさえ、兵器に自分が狙われるかもしれない恐怖を感じてしまえば狙いが定まらず……精強に鍛え上げられた秋蘭の弓部隊からすればいい的である。
流れ矢に気を付けつつ外を見やりながら、二人はうんうんと頷いた。
「改良型投石機……やはり小さい方が速さが出ますね」
「城を守るだけならこちらの方が使い勝手もいいな」
「ただ、敵に真似されて大型の投石器を作られると城壁もろとも破壊される恐れが出てきます。現段階では“ばりすた”の的にもなりますし……」
ちらりと兵器を見れば、兵士達が次々に石を打ち出していた。
少しだけ開けた間では、如何に矢の対策に板を取り付けていると言っても、バリスタの槍は防げない。
袁紹軍は先にこちらを狙うべきだったのだが、ギリギリまで板で隠されていたので見えるはずも無く、凄惨な状況を作り出してしまったわけだ。
初の実戦では判断が鈍る。城門がまだ破壊されていない状態でこちらの兵器の攻撃を受けても、袁紹軍はバリスタをその対応に向けられない。そこまで全て軍師達の読み筋。
「心理的な駆け引きが何より重要視される……これはそういった戦になりました」
「互いに兵器を持ち寄れば確実に長期的な城攻めになる、か。徐晃の言った通りだな」
「然り。投石器が攻城戦で実践投入されれば、長期日数を以って城壁自体を破壊するといった手段にも乗り出せるでしょう。ただ……やられて一番厄介なのは彼の言っていた“ういるす”……死毒ですが。腐乱死体や死骸を投げ込んで疫病を流行らせるなんて……恐ろしいにも程があります」
それは死んだ者の身体を利用する、倫理観を無視した策。儒教が根深く浸透しているこの大陸では、まず使われないモノ。
ぶるり、と身震いをした稟は自分の身体を抱きしめた。彼の異質な知識が敵でなくて本当によかった、と。
「用水路を封鎖しての断水よりも、水場に浸されるだけでも恐ろしいな。疫病は気付きにくいし流行るのは早い。飲める水が無ければ……人は生きられんよ」
「水瓶に溜め込んでいるのでしばらくは耐えられますが、見えないというのが何より恐ろしい」
「全く……目に見えないモノを信じろというのだからさすがに
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