赤は先を賭し、黒は過去を賭ける
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はや通用しない。
情報を集めれば集める程に、十一度目の袁家は救えない欲望の掃き溜めになっていた。
高笑いが似合っていた麗しい当主は……臆病さが際立てられて傀儡になっていた。
二枚看板と謳われていた二人にすら隠し通せる哀しい道化。
人質など、少しバカでも醜い事が嫌いな当主なら精一杯反抗していたはずだろうに。
そして彼女は……逃げられない。
昏い暗い闇に捉われて、この掃き溜めから逃げ出す事が出来ない。
どうすれば彼女を救えるのか、考えても考えても分からなかった。
前の時には居なかったあの男と、優しかったはずの上の者達が邪魔をする。
前の時は何もしなかった龍が表舞台に出てきて邪魔をする。
世界は戦略を変えて自分を潰しに来た。
自分という異物が混ざったから、それを消す為に世界自体が変化した。
自分から彼女も友達も奪い去った。
これは罰、なのかもしれない。
友達を殺し尽くしたから……全てを奪い去ったのだ。
救いの手は無く、他人に話す事も出来ない。
たった一人で世界を変えるには、もう道筋は一つしか残されていなかった。
自分の存在理由は彼女だけ。
彼女だけ。
彼女だけが生きてくれるなら、もうそれだけでいい。
その為なら……覇王に任せよう。
才あるを愛する覇王なら、今回の彼女を救ってくれる。
袁家を潰してもこの世界は壊れなかった。
自分の所属する勢力を勝たせなくてもこの世界は壊れなかった。
きっと世界改変の方法は、彼女を生き残らせる事。
そうでなければ、どうすれば世界は変わるというのか。
そうでなければ、自分がしてきた事はなんだったのか。
きっと自分は狂っている。
狂っている自分は、この世界には必要ない。
彼女の運命を捻じ曲げられるなら
このマガイモノの命、喜んで捧げてくれよう。
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