赤は先を賭し、黒は過去を賭ける
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秋兄とあたし達の関係を疑ってた事を逆手にとってやろう。兵士を連れて行かなきゃこっちの被害も無いし、十分だ。
あたし一人が向かったら曹操軍は手が出せない。それが出来るのは秋兄だけで、それをするなら彼は曹操軍から離れないとダメになる。
誇り誇りってうるさいから、あいつらはあたしと秋兄に話だけさせるしかないだろう。
そんな理屈ばかりこねくり回しても、所詮は我欲が一番大きい。夕の為になる事をすれば、あたしのお腹は少しばかり満たされるのだから。
「ふふっ♪ なんか楽しみだー♪」
†
打ち壊された兵器は一基。曹操軍全体の被害兵数は五十にも届かない。結果としては上々であった。
遠距離から兵器を壊される事もあるのだと兵士達も理解したようで、さらに気を引き締められたのも大きい。
彼は遠くに転がる死体をじっと眺めていた。深く渦巻く黒には、冷たい光が揺れていた。
自分が殺したという実感がひどく曖昧だった。それも詮無きかな、彼は指示を出しただけで、刃を振るったわけではない。
嘗ての自分もこんな感覚だったのか、と思い悩むも、何処か違う気がした。
あれだけ怖かったのに……自分は壊れているのかと疑いたくなった。
結果は出せた。被害は防衛戦で有り得ない程に軽微に抑えられたといえよう。
人を救えたという安堵が来るかと思った。しかし胸に湧いたのは、傍観者のように人の生き死にを眺めているような透いた感覚。空虚な渇望は、一つも満たされなかった。
――これじゃあ朔夜を咎められるわけないわな。
各所での蹂躙の結果報告に心動かないモノがもう一人。
当然と受け止め、風と稟の手腕にも満足気な朔夜。経験で勝る彼女達に話を聞こうかとも思ったが、彼が動かないのなら此処で待とうと隣に侍っていた。
「……一人で来たのか」
じ……と彼の感情を読み取ろうと見つめていた朔夜の耳に、重たい声が響く。
首を正面に向けると……赤い髪の女がボロボロの姿で、たった一人で歩いて来ていた。
将なら馬を使えばいいのに、と思うも口には出さず、非効率な事をする敵将を睨みつけた。
秋斗が歩みを進める。朔夜も同じく……並ぼうとして止められた。
「侍女姿ばかりしてる意味を忘れるなよ、朔夜」
「……や、です」
止めるも否定。朔夜にしては珍しい素直なわがまま。
足を止めた彼は、大きなため息をついて向き直り、屈んで彼女の頭に手を置く。
くしゃり、と一度だけ撫でられた。白に混じる藍の上だけをするりと流されて、秋斗と目を合わせる。
「あいつと話すだけなんだが……」
「それでも、や、です」
彼の変化を見逃さない為に、とも言わず。朔夜は口を尖らせて首を振った。
「あいつと二人で話がしてみた
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