赤は先を賭し、黒は過去を賭ける
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優先に設定したからこそ、彼らは狂えたのだ。
冷や水を浴びせ掛けられたように熱が冷めるだろう。あたしと夕が与えた恐怖と同等以上を突き付けられては、僅かな違いだが、くだらない烏合の衆に堕ちてしまう。
逃げ出しはしないように厳しく隊のバカ達に言いつけたから最低限は問題ない。
斗詩もよく分かっているからか、難しい顔をして押し黙った。
どちらともなく、二人で地べたに腰を下ろす。遠くに見える官渡は、戦が終わった後では不気味に見えた。
風が気持ちいい。目を細めて頬を擽る髪の毛を片手で弄ぶ。くるくると回して解いてまた回す。
自分も斗詩も、服がボロボロで身体は傷だらけ。致命傷はなかったけど面として迫る大量の槍は躱しきれなかった。両手なら無傷でいけたのに……とは言っても仕方ない。
「杭を抜いて普通の攻め、なんて甘いかな?」
「無理。抜いてる間に狙い撃ちにされるよ。おっきな石は鉄の盾でも防げないし。東と西の様子から判断すれば梯子は却下。鉤付き縄で昇るなんて論外だし、少数が入っても曹操軍相手じゃ攪乱のしようがないね」
「壊れた城門を突破するのは?」
「物量で? 多分無理だね。対策準備してたから燃やされても動じなかったんでしょ。攻城戦は外だけじゃない。門を抜けた後に待ち伏せとか、迷路でも作られてたら最悪じゃん?」
「じゃ、じゃあ南側を叩くのは――――」
「普通ならそれくらいだろうけどあたしは反対。擬似死兵に鍛え上げれなくなった時点で攻城戦はしない方がいい。勿体ないんだよ、時間も、兵数もさ」
彼女は攻略の糸口を考えていたらしい。
無駄。無駄な思考だ。籠ってくれてるなら攻めないでいい。どうせ覇王が来ないと何も始まらない。
相手は兵数が足りない。こっちは時間が足りない。外部の動きも合わさって、官渡を攻めるのはもうおしまいにするべきだ。
城攻めの方法は……幾つかある。でもするならまた被害が増える。
例えば地下道を掘る事。城壁の重点を崩してしまえば崩壊も為し得るし、内部侵入での攪乱も出来るだろう。ただし余裕を見るなら一月とか二月とか掛かり、敵にはバレバレで賭けに等しい。
調略は効かないし、物資の枯渇は狙えそうにない。石も槍も、向こうは手に入れやすいモノしか使っていないのだ。まあ、油は攻め続ければ切れると思うが、どれだけ被害が出ることか。
きっと夕はこれ以上官渡に構わない。そんな無駄な時間は、あたし達にはない。且授様の命の灯は、刻一刻と小さくなっているのだから。郭図や上層部にばれないように探してはいるが、本腰を入れて探すには早い内に終わらせるに限る。
何より、幽州から来る白馬義従にも対応を当てなければならない為に、自然と時間は限られてくる。
「初めは兵の被害を増やしたのに、こっちでは兵の被害を気にするの?」
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